第十一話 「革命児の片鱗・後編~悪鬼~」



私は即断即決即行動をモットーにしている


こんな事を言えば思い付きで生きているように思われるかもしれない


けれど決して思いつきだけで動いている訳ではない


閃きを信じているだけなのだ


閃きは偶然に生まれるものではないと思う


それを自分のものにするためには


日々考え続ける習慣を身につける必要がある


しかし私は決して継続的に物事を考えるタイプではない


その時その時を真剣勝負的に考え生きている


私が閃きを信じられるのは


そんな体質なのに、


継続的にものを考える習慣を無理やりに植え付けられたからかもしれない


元々、思いつきや直観力にに頼る傾向は強いけれど


兄は定期的に、懐疑的になるような疑問を投げかけてくる


私はその事を調べ尽くし、自分なりの答えに辿り着くまで考え続けた


子供の頃からなので、今やそれは習慣となっている


短期決戦型の私が長期的に物事を考える習慣がついたからこそ


閃きを自分の友とする事が出来


縁財を追い詰める事が出来たのかもしれない


最早奴に救われる道は無い


もちろん、この視聴覚室に辿り着いていない縁財はこの事実を未だ知らないのだ


私は始め、バスケ部員達に縁財が滅んで行く姿を見せてやろうと思っていたが


少しばかり気が変わった


心底縁財に憎悪を感じているからだ


つまり、奴を完膚なきまでに叩き潰す事にした


そんな過激な事を彼女達に見せるのは気が引ける


それに、面白い趣向を思いついた、


ただそれを実行する為には、一人で縁財に対峙する必要があるのだ


私は準備した旧型のDVDプレーヤーをプロジェクターに繋げると


程なく縁財が入ってきた


「一体何の相談なんだ?先生は忙しいから手短に頼む」


実に男らしい話し方だ


「しかし暗いな、出入り口しか照明がついていないではないか」


視聴覚室には窓は無く、昼間でも照明をつけなければ暗い


その為明るい外から入ってきた奴には


暗すぎてはっきりものが見えないのだ


他の照明をつけようとした縁財を私は止めた


「先生待ってください、実は今回見ていただきたいものがあるのです」


「なんだ?しかしそんなに時間は無いぞ」


「大丈夫です、5分もかかりませんから」


そういうと、私はプロジェクターとDVDプレーヤーのスイッチを入れた


すると縁財が、


玉城真利の顔面にバスケットボールをぶつけるまでの経緯が映し出された


みるみる奴の顔が険しくなっているのが解る


奴の頭がまだ真っ白になっている間に


プロジェクターからDVDプレーヤーを外して違う配線を素早く差し替えた


「お前これは一体」


私はプレーヤーからDVDディスクを取り出した


「ここにお前の罪状が入っている、まだコピーはしていないけれど、これを教育委員会か、不祥事ネタの好きなマスコミに送付したらどうなるか解るな」


「お前は脅すつもりかっ」


縁財はヒステリックな口調になっている


「脅す?笑わせんな、そんな事はしない、これは言わば大掃除なんだ、お前のようなゴミくずを学校から追い出すためのな」


「なんだとっっ」


縁財の声に凄みが加わってきた


「お前は自分が熱血教師だと自負しているようだが、実際は暴力で生徒をねじ伏せる醜いクズ野朗に過ぎない」


私はわざと奴のプライドを擽ることにした




「まる、良く覚えておくといい本物のプライドとは何ものにも傷つけられる事は無い、世の中には簡単に人に傷つけられてしまう偽物が多いけどな」


兄が私にそんな懐疑的な謎を示してから


私は散々プライドとは何かを調べ続け考え尽くした事がある


結局プライドとは


自分のポリシーに準じて生きる生き様そのものだと気がついた


この場合のポリシーは方針というより自己哲学に近い


つまり自分で決めた事は貫き通す、


そんな生き様こそプライドそのものなのだ


例えば


ブランドと呼ばれる商品を生み出した会社のプライドとは


その商品の品質を維持する事


或いは、その品質を少しでも磨こうとする姿勢にある


だから、そのプライドを傷つけるという事は


その商品の品質を下げる事以外の何ものでもない


では教師のプライドとは一体何処にあるのだろうか?


それは生徒に対する深い愛情に根ざした思いで


少しでも最善の方向へ導こうと努力する姿勢の事だと私は思う


その考えから見れば、縁財には最初からプライドなど持っていない事になる



「なんだとっっお前先生に向かってなんて口をききやがる」


怒りを露にしてきやがった


つまりコイツのプライドとはその程度のものなのだ


「私は一度もあんたの事を先生だと思った事はないよ、縁財」


私の言葉に反応するように縁財は物凄い形相になった


「いいだろう、俺がお前にとって先生ではないなら、一人の人間として動かせてもらうぞ」


そう凄みを利かせて言うと、突然不気味な笑みを浮かべた


「ほう、お前は自分の事を人間だと思っているのか?それこそが勘違いだ」


しかし縁財の不気味な笑い顔は消えない


「この視聴覚室を選択したのは、失敗だったな」


「つまり口封じをするって事か」


「今のところ証拠はそれだけだ、それさえなければ問題はなくなる」


今度は私が笑う番だった


「確かにマスターはこれだけしかない、だけどなこれが無かったとしても、お前をこの学校から追い出す事は出来るぞ、このディスクに収録されている暴力の噂を学校中に広めれば、父兄は黙ってはいない、お前は必ず吊仕上げられて、やがては突き止められる事になる」


縁財の顔は再び恐ろしい形相へと変貌していった


次の瞬間DVDプレーヤーを思いっきり自分の頭に叩きつけた


額から血が流れ落ちた状態で私を睨んでいる


「こういう筋書きも出来るぞ、何らかの誤解の為か逆上したお前を抑えようとして、もみ合いになり、困ったことになった」


普通なら恐怖を感じる場面だろう


視聴覚室はドアを完全に閉めてしまえば、中の音が外に漏れることは無い


つまりどんなに叫んでも誰にも聞こえず外からの助けは望めない


それに


相手は体育の教師で188センチ95キロという体格だ


しかも脂肪は少なく筋肉の鎧を身に纏っている


如何に私が空手をしているといっても


まともに戦えば勝ち目はない


この絶対的不利な状況で恐怖を感じない者は少ないだろう


ここから先は命のやり取りとなるからだ


ところが、私の細胞は今にも噴火しそうなくらい活性化している


「やれるものならやってみろ、お前にそんな度胸があるならな」


私の挑発で奴は正気を失い、私に襲いかかってきた


すかさず私は奴の足元から私に向けて這っている配線を


恰もヘビのように蛇行させて輪を作り、奴の足に引っ掛けて


思いっきり引っ張った


如何に体重のある男であろうと感情的になって全力で走って行く最中に


足に絡まった配線でバランスを崩したら、そう簡単にその状態を脱しえない


奴がバランスを取り戻す間を与えずそのまま引っ張れば


当然奴は後ろ向きに倒れてしまう


私は体当たりするようにその転倒の手助けをした


当然加速度がついて背中を物凄い勢いで叩きつけられる


更にその反動を利用して私は平手で奴の胸の真ん中当たりを三回叩きつけた


丁度その下に心臓がある


背中と胸の両方から心臓にショックを与える事で


一時的に身動きが取れなくなる事を私は知っていた


格闘技オタの私は人間の急所を調べつくしていたからだ


奴は今呼吸すらままならない状態になっているだろう


その機を逃さず、床に落とされたDVDプレーヤーを持つと


縁財を跨いで立った


そのままプレーヤーの角を奴の額に向けると大きく上に上げた


どんなに体を鍛えたとしても、プロの格闘家で無い限り


額を鍛えるなんて事はしないだろう


「なぁ~縁財、こういう筋書きも考えられるぞ、相談しようと呼び出した先生に突然襲われて夢中で抵抗していていくうちに、手が滑ってしまった」


縁財の顔がみるみる青ざめて行く


当然の反応だ、狡賢いこいつの事だから、


私が、未成年は少年法で守られている


その事を逆手に取って行動している事は理解出来るはずだ


これは決して脅しではないのだ


「お前は今まで、攻める方の立場だった、だけどな何時までも攻める立場でいられると思ったら大きな間違いだ、やればやられるのが自然の理だからな、いつか自分がしてきた事と同じことをやられても文句を言う資格はないぞ」


私はプレーヤーに力を込めると


「たっ助けてくれ~」


縁財はやっとの事でその言葉を発したようだ


「なぁ~縁財、少し前までは立場は逆だった、お前は私が命乞いをしたら助けたか?」


「頼む助けてくれ」


私は命乞いが大嫌いだった


理不尽に一方的に襲われる時は別だが


少しでも間違えればやられるのは私のほうだった


これは対等の戦いなのだ


刺し違える覚悟が無い奴に戦う資格など無い


「いい事を教えてやる、実はこのディスクはコピーなんだ、今から始まる生徒総会で、全校生徒がこの動画を見ることになる、それだけではないぞ、今頃このディスクのコピーは、教育委員会とマスコミ宛てに郵便ポストの中へ投稿されているはずだ」


縁財は大きく目を見開いて驚いている


「これだけで済むと思うな、この動画は128箇所の動画サイトから一斉に公開される手はずは整っている、つまりお前の居場所はもうこの世の何処にも無いんだ」


縁財はそれでももがいて動こうとした


「往生際が悪すぎるぞ、ここで消えた方がお前の為だ」


「頼む助けてくれ」


懇願するような縁財の声が聞こえてくる


「未練なっっ」


ここでコイツを許しもまた何処かで同じ事を繰り返すだけだ


私の心の奥底でメラメラと燃え上がるものに後押しされるように



私はそのままプレーヤーを振り降ろした




つづく



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良い子の皆さんは決して真似しないで下さいねΣ(@@。。


第一配線を走ってくる相手の脚に巻きつけるなんて芸当は


余程の修練を積んだものでも難しい


私は高校の時に視聴覚室で見つけた太くて柔軟な配線をみて思いつき


漫画に描いたことがあるのですが


実際に友人に試してみたら全然出来ませんでした(--。。


ってか、この時の主人公まるは間違っていると思います。。


私は昔から主人公だって間違いを犯し、悪役だって良い事をする


そんな場面があっても良いと思っていました


そう言った考えをするのはきっと


人間って間違いを犯しながら成長していくと思っているからかもです


ところで、今回右クリックという技を知ったので


右クリックで全てを選択し


右クリックでコピー(ΦωΦ)ふふふ・・・・


こんな簡単な事に気がつかなかったなんて(≧▽≦)


最早アメブロの保存も公開も信用出来ませんからね


早速、書き上げてからそれを実行して


アメブロの保存をクリックしたら


アッサリ保存しましたの表示Σ( ̄□ ̄;)


万全を期したらこんなもんですよ(--。。


折角ガッツポーズとざまーみやがれの台詞を用意していたのに


なんか残念のような良かったような・・・・(=◇=;)



まる☆