第四話 「光と闇のコントラスト~鳥居美紀の場合~」



鳥居美紀は一年生でレギュラー入りを果たしていた


世の中にはそれをする為に生まれてきたような


特別な才能を持っている人が時々現れる


彼女もその一人かもしれない


実は私は才能という考え方が好きではない


確かに素質や適正など向き不向きはあるし


センスの良し悪しもある事は理解できる


だけど、人が何かを果たせる事と才能とは比例しない


才能があったからといって、


必ずしもその世界で成功しているとは限らないから


私がこのような考え方をするようになったのは


ずっと兄の背中をみていたからだ


兄は友人知人から才能の塊だと評価されている


だけど、彼らは知らない


人が見ていない所で血が滲む様な努力をしている事を


しかも、そんな事をおくびにも出さない


懸命な努力なくして、その才能とやらが開花するなんて事はないと思える


たとえば、天才と呼ばれる人がいるとしたら


それは、


努力とは呼べない努力を繰り返してその天才っぷりが発揮されていると思う


これはもう依存症と呼べるもので


人が血の滲むような努力をしている内容の事を


そのような人たちは、楽しくて、楽しくて仕方が無くて


寝るのも食べるのも忘れて、やり続けてしまうのではないだろうか


誰かか止めてやらなければ、多分死ぬまでそれをしてしまう


それが天才が短命だと言われる理由の一つのような気がする


止めたくないのだ、ずっとしていたい、


友達との遊びが楽しくて永遠にこの楽しみが続いて欲しいと願う子供のように


精神が肉体の限界を超えてしまうタイプともなると


時としてそのまま、現実に帰ってこれなくなる事だってあるかもしれない


そのため日常生活に支障をきたす場合がある


これは天才と狂人は紙一重という理由の一つではないだろうか


このような天才は別として


天賦の才能を持ち合わせた者は


それが発揮された時には、賞賛を浴びる事になるけれど


反面人々の嫉妬や妬みの象徴ともなりえるのだ


兄の懸命な努力を知っている私は


妬まれて酷い意地悪をされている現場を見るたびに


怒りを覚える


それでも、仕返しをする事も無く、耐えているわけでもなく


ただそんなものは関係ないと生きている姿はとても理解できない


「腹が立たないのかこんな事されて、私なら絶対仕返ししてやる」


「俺には奴らの悲しみが痛いほどわかる、これで気が済むなら幾らでも、させてやるよ、だけど多分、こんな事をしても決して報われはしない、俺はそれが悲しい、もしその事で俺に勝ってやろうと挑んできてくれたら、どんなに嬉しいことだろう」


兄はいつも自分の事なのに他人事のように話しをする


こんな考えを私が納得できるはずは無い


けれど、そういう考えがある事は理解できた


話を鳥居美紀に戻そう


私の中学校は都大会でも常に上位にいる


決して弱くはないけれど


彼女がレギュラーに入ってから優勝して全国大会へ進出した


それからは快進撃と言いたい所だけれど


全国大会ではかろうじて三位


その理由は、バスケットボールは一人では出来ないという事だ


二年生の今となっては、彼女だけが突起している


彼女のずば抜けたセンスに他の部員達はついていけないのだ


結局、大会では彼女がどんなに決めても、


他の部員達に足を引っ張られるカタチになっていたようだ


バスケ部は八月の全国大会に向けて猛特訓を始めている


だけど鳥居美紀はたった一人個人練習をしていた


きっと彼女の練習相手になれる部員が


既になくなってしまっているのだろう


私は彼女の持ち物を観察してみる


案の定、鞄や上履きにらくがきの痕跡を見つけてしまった


彼女のファンは多い、実際後輩にも慕われていて女子部員も増えた


けれど、ここ数ヶ月でその半数以上が退部している


ただの憧れだけで続けられる程、なまやさしい練習メニューではないのだろう


しかしそれだけでないはずだ


光が強く輝けば輝くほど影は濃く強くなっていく


彼女のスター性は多くの先輩達の妬みの苗床になったに違いない


つまり、彼女のよからぬ噂が後輩達に反響している


顧問の先生と出来ているとか・・・援助交際しているとか


女子らはこういったスキャンダルネタが大好物なのだ


たちまち全校生徒に広まってしまう


今では彼女に声をかける生徒はいない


それでも彼女はバスケを辞めない


「孤独だね~」


私は彼女に絡む性悪の同級生を演じてみた


「何か用?練習の邪魔なんだけど」


壁にもたれて彼女を見ている私に振り向きもしないで


ひたすらフリースローを続けている


一年生の頃は決してこんなツンケンした子ではなかった


「元クラスメートに冷たいんじゃない」


「私は過去なんて振り返らないの、それにあんたの事なんて忘れたわ」


愉快だ打てば響いてい来る


「そんなだから、友達も出来ず、同じバスケ部の部員にも見捨てられるんだよ」


一瞬彼女の動きが止まったが、それは一瞬だけだった


「そうやって人の心を搔き回そうとするゴシップ記者にでもなったつもり?」


彼女はフリースローを再開しながら続けた


「私はあなたの事が大嫌いだったよ、人の心の中にズケズケと土足で入ってくる無神経で、自分の事しか考えない自己中心な性格がね」


私は愉快でつい笑いがこみ上げて、大笑いした


これには流石の鳥居美紀も驚いて私を見た


私がそんな言葉でショックを受けるとでも思ったのだろうか?


残念ながら私はそんな事で傷つけるほど平和な家庭環境で育っては居ないんだよ


「私の事は忘れたんじゃなかったの?あんたっておめでたいね、一年生の頃からそう思っていたんだよ」


流石の彼女も怒りを露にして私の元に歩いてきた


「聞き捨てなら無い言葉ね、どういう意味か教えてくれるかしら」


私はいつも本音で付き合おうとしている


それはきっと世の中では通用しない


社会に出れば、みんな悪魔の尻尾を生やして


心にも無い言葉や態度で人と接して生きなければ


暮らしていけないようになるだろう


だからせめて学生時代は自分に正直に生きていたい


少なくとも未成年である私たちにはそれが許されている


「本当は寂しくて悔しいクセに、全然平気だよって私には関係ないってクールなフリして生きている所がね」


「私は寂しいなんて感じた事無いわ」


それならどうして、そんなに腹を立てている


本音を暴露されて、焦っているのがミエミエなんだよ


「ほらちょっと本音を突かれた位でクールな仮面がはがれた」


私はちゃかすように大笑いした


「あなたって本当に性悪ね、そうやって人の心の傷を抉り出して何が楽しいの?」


それは違うよ、あんたの傷がどうしても見えてしまうから


痛くて痛くて辛そうなのに、それを隠しながら生きている


そんな姿が見ていられないだけ


「私はお節介なだけだよ、まぁ~人の困っている顔が好きではあるけどね」


私はもう一度大笑いしてみたが


何故か彼女の顔が驚きに変わって行く


「あんたなんで泣いているんだよ」


へえ?泣いている?・・・・


「泣きながら笑っている人始めてみたわ」


そういうと、涙を流しながら笑っている私の顔が余程面白かったのだろうか


そのまま大笑いした


しかし、涙って自覚無くても流れて行くもんなんだと始めて知った


それでも


私は人の笑い顔が大好きだ


そうそう鳥居美紀はこんなに可愛らしく笑うんだった


そうか私は、少しずつ彼女からは笑顔が消えていく事が寂しかったんだ


「良かったぁ~あんたの笑顔が見られて」


「あなた私を笑わせに来たわけ?」


「そうだよ、それ以外何もない」


「怒らせたり笑わせたり、まったくあなたは何者?」


「あんたの元クラスメートのまるだよ」


私はドヤ顔を彼女の顔に近づけた


すると彼女は大笑いした


なんでだ?


黒子も確か同じ事したら大笑いした・・・・


「もしかして、そんなに私のドヤ顔って面白い顔なのかっっ」


鳥居美紀は笑いが止まらないらしく、笑いながら頷いた


が~ん、なんかショックを受けたぞ


しかし・・・これは使えるかも知れない


私はほんの数秒で立ち直った


「私はあんたを応援する事にするよ、だからあんたは一人じゃない」


今度は鳥居美紀が涙を流す番だった


張り詰めて今にも切れそうな心が


ようやく緩める事が出来たのだと思った


「あなたって本当によく判らない、一体何を考えているかサッパリ」


「泣きながら悪口言う人を私は始めてみたよ」


二人は涙を流しながら大笑いした


考えている事は解らなくても、気持ちは伝わったと思う


私は兄のようには決して考えられない


意地悪する奴らをこのままにして置けるほど、私の心は広くないんだよ


「美紀、笑顔みせてね、全国大会応援するから、バスケ部じゃなくて私は鳥居美紀を応援するから、勝ち負けじゃなくて最高の笑顔をみせてね」


「いきなり呼び捨て?まったくあなたって馴れ馴れしいんだから」


「あんたも私の事まると呼び捨てにしていいぞ」


「バカじゃないの、まるで友達みたいじゃない」


「もう友達だっっ」


「冗談じゃないよ、私はそんなに簡単に友達は作らないよ、第一私あなたの事大嫌いだし」


「おう、じゃあそこから始めよう」


私が前向きにガッツポーズしたら


鳥居美紀はマジ笑いした


そのあと直ぐにまたフリースローを始める


その場を去ろうとした私に彼女は


「でも、ありがとう、まる、少しは気が晴れたよ」


彼女は照れてなのか私の方を見もしないで言った


「まったく、照れ屋さん」


言ったらバスケットボールが顔面に命中した


友達になるのに時間は関係ない、ただ鼻血が出るかもしれない


帰ったらノートに今日の教訓を書こう



私が鳥居美紀に近づいた理由は他にあったけれど


彼女の現状を垣間見ては気持ちも変わってしまうよ


本気で彼女の事応援すると決めた


けれど、一つ問題がある


それは彼女と他の部員との確執ではない


顧問の縁財時巳先生だ


黒子に教えられてから、私は縁財先生のついてリサーチをしてきた


兄に鍛えられたこの力を駆使していくうちに


恐るべき事実が見えてきたのだ


私は敢えて直接、縁財先生にコンタクトを取らず


他の部員達に接近していった


そして、西田美代子に辿り着くのにそんなに時間はかからなかった


彼女が何故奈津丸を追い出すためにあんな酷い計画を立てたのか


ようやくその謎が解けてきていた



つづく



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話が大きくズレてしまった気もしますが・・・


また新しいキャラが今日誕生しましたΣ(@@;)


私の悪いクセなのですね


キャラ達が大漁に発生して


しかも、みんな個性が強くて濃い性格している(--。。


そのため、話が思わぬ方向に行ってしまったり


今まで散々否定されてきましたが・・・


それでも、私はキャラは作るのではなく生まれてくるのだと思います


だから生まれてきたキャラ達の意思を尊重して生きたい


たとえプロットを何万回書き直す事になってもね(--。。


こんな考えだからプロとしてやって行けないといわれて来たんだろうなぁ~


まっ過ぎ去った事を考えても仕方がない


という事で・・・プロットをまた書き換え作業頑張りますо(ж>▽<)y ☆


ってか


こんな方向変換ばかりするお話


みんな楽しんでくれているのだろうか?Σ( ̄□ ̄;)あせる


まる☆