最高傑作とは言われていないが隠れた傑作を探る⑤~ふきのとう「歳時記」 | EVERYBODY'S TALKIN'/噂の音楽四方山話

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60年代~70年代の洋邦楽、ジャズ、クラシックの個人的に好きな曲のみをご紹介いたします。また自分のライブハウスでの弾き語りなどの情報、その他の趣味なども。

今回はこのアルバム!


歳時記/ふきのとう
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今回は久しぶりに「隠れた名作」をご紹介したい。
「ふきのとう」の「歳時記」がその作品。

アルバム『歳時記』(1976年)はそれまでに発売された


『ふきのとう』(1974年)
『ふたり乗りの電車』(1975年)
『風待茶房』(1976年)


の3作から、タイトル通り春・夏・秋・冬の四季折々の唄を選び、3曲山木さんのギター・インストを加えた、ベスト・アルバムである。よって単にそれまでの作品から有名なものばかり選んだ、所謂「ベスト・オブ・●●」などの企画アルバムとは、明らかに一線を画した作品となっており、オリジナル・アルバムを聴くような感覚になれる作品でもある。


 但し季節が不明なものは、素晴らしい曲でも選ばれていないので、念のため。(ex「夕暮れの街」は未選出。)
 バック・ミュージシャンは、当方が所持しているアルバムには全くミュージシャン名が記載されていないが、おそらく次のような辣腕ミュージシャンがサポートしていると思える。


吉川忠英(AG、BANJO)
水谷公生(EG)
後藤次利(B)
高橋ユキヒロ、平野肇(DR)
栗林稔、佐藤準(KEY)
くじら(Fiddle)
風間文彦(Accordion)


そして編曲としてクレジットのあるアコースティック・ギター名人「石川鷹彦氏」も参加しているに違いない。


1. 虹を翔(かけ)る石鹸玉(シャボンダマ)(インストゥルメンタル) 作曲/山木康世
 このアルバムには新たにこの曲を含め3曲のギター(アコギ)によるインストが3曲入っている。冒頭のこの曲は春の香り漂うウキウキした感じを表しているのか?よーく聴くとバックでカウントを取っている人の声が聴こえる。


2. 南風の頃  作詞/村上実  作曲/山木康世 編曲/瀬尾一三
 細坪さんのボーカル。北海道出身の彼らだけあってやはり、春は待ち遠しい季節なのだろう。出だしのハープが美しく響く。後半のハーモニーも彼らならではの展開。どことなくディスコに走る前のビージーズを聴いているような懐かしい曲。

3. 5月(メイ・ソング) 作詞・作曲/細坪基佳 編曲/瀬尾一三
 細坪さんのボーカル。完全に春の唄。この曲も2人のハーモニーが独特で聴きもののひとつ。以前にも書いたことがあるが、細坪&山木のハーモニーは、音域がかなり違う2人によって作られるため、オフコースの小田&鈴木のように、同じ高音域でハモる、ハーモニーとまた違った魅力があるのだ。

4. 朝もやの中で  作詞・作曲/細坪基佳  編曲/瀬尾一三
 細坪さんのボーカル。「ふきのとう」は元々山木さんの曲を細坪さんが歌うというスタイルでデュオを組んでいたようだ。これは丁度サイモンとガーファンクルにおいての、「明日に架ける橋」のようにポール・サイモンの曲をアート・ガーファンクルが唄うのと同じスタイルだったのだが、ここでは作曲の腕を上げた細坪さんが自分で作って、自分で歌っている。(5月(メイ・ソング)もそうだが)ピアノの弾き語り風に作られているこの曲は、まさしく70年代のニュー・ミュージックを代表しているような作風だ。


5. 蛍(インストゥルメンタル) 作曲/山木康世
中々雰囲気のあるインストだ。ニューエイジミュージックにいれても良いくらいの出来と思うが。


6. 蝉 作詞・作曲/山木康世 編曲/瀬尾一三
  山木さんが作り自分で歌っている。低音の山木さん独特の世界が始まる。話が逸れるが、当時のニューミュージック界は殆どがハイトーンのテノールばかりであったので、彼のような声はむしろ貴重であった。寺尾聡の低音が持てはやされたのはもっと後の80年代である。


7. 君に寄せて (作詞・作曲/細坪基佳 編曲/瀬尾一三)
 細坪さんのボーカル。「ふきのとう」にはこのようなワルツが多い。いずれもイントロを聴いただけで良いのが分かる、ウキウキするものばかりで聴いていてほっとする作品。


8. 初夏 (作詞・作曲/山木康世 編曲/瀬尾一三)
 細坪さんのボーカル。これは、彼らにしては、珍しいタイプの曲。「初期の井上陽水の曲を彼らがカバーした」といえば、騙されるひともいるのではないか。


9. 静かな夜に (作詞・作曲/細坪基佳 編曲/吉川忠英、瀬尾一三)
 細坪さんのボーカル。ちょっとデキシーも意識したようなサウンドが個人的にうれしい作品。


10. 運命河 (作詞・作曲/山木康世 編曲/瀬尾一三)
 これも細坪さんのボーカル。暗いタイプの曲だが、この曲には非常にファンが多い。世の中には「神田川」「縁切寺」「織江の唄」など暗い曲は数多あるが、この曲が最も暗い名曲、という人もいるくらいの作品だが、意外と知られていない。個人的話で恐縮だが、私の弾き語り仲間で暗い曲ばかり歌うYさんに是非とも歌っていただきたい。(一部の読者笑)

11. プラットホーム (作詞・作曲/山木康世 編曲/石川鷹彦)
 細坪さんのボーカル。(語りも同じ)
 「ふきのとう」には名曲「山のロープウエイ」など曲の途中で「語り」が入る曲が何曲かある。こういったタイプの曲として有名なものに加山雄三の「君といつまでも」があるが、どうも聴くのはいいとしても、唄うには恥ずかしくなるので、苦手な曲であったが、普通に唄っている部分は非常に気に入っている作品。。


12. 冬将軍(インストゥルメンタル) (作曲/山木康世)


13. 白い冬 (作詞・作曲/山木康世 編曲/瀬尾一三)
 冒頭に挙げた「やさしさ~」「夕暮れ~」と並ぶ、彼らの代表曲。これらの曲同様、細坪さんのボーカル。
 タイトルにずばり「冬」が入っているので、堂々の選出。前にも書いたような気がするが、ビートたけしが好きなフォーク・ソングの代表曲。ヒットしたのであまり余計な説明は要らないだろう。


14. メリー・クリスマス(作詞・作曲・編曲/山木康世)
 これは、山木さんのボーカル。編曲も山木さんだ。山下達郎の「クリスマス・イヴ」も「きっと君は来ない」ので、決してハッピーなクリスマスではないが、この曲はもっと「絶望的なクリスマス」だ(笑)。しかし曲の終わりに聞ける口笛による「サイレント・ナイト」はなんだか幸せそうな感じも無きにしも非ず。

15. 帰り道 (作詞・作曲/細坪基佳 編曲/吉川忠英、瀬尾一三)
 細坪さんの曲。歌詞は未だ暗いがメロディーはアップ・テンポとなり快活。バックのエレピも饒舌だ。このアルバムの締めくくりに相応しいものと言える。


 最後の最後に書くが、細坪さんのボーカル・テクニックと声は「抜群」の一言。最近は元オフコースの鈴木康博氏とデュオ(あるいはハイファイの山本潤子さんも加えてトリオ)のように活動することが多い細坪さんだが、鈴木氏が小田和正氏の次にデュオの相手として細坪さんを選んだのは、至極当然の選択のような気がする。