キャロル・キングが現在のようにシンガーとしても世界的に有名になったのは、70年代に入ってからだが、ソング・ライターとしては既に60年代始めから当時の夫である、ゲイリー・ゴフィンと「レノン=マッカートニー」にも匹敵するヒット・メーカーコンビを組んでいた。これらは今更語る事も無い程の有名な事実だ。しかしそのヒット・メーカー時代の60年代の彼女の活動を語る時に何故か、モンキ-ズに曲を多数提供していた、などという話しは省略される事が多い。また仮に紹介されていても「プレザント・バレー・サンディー」というヒット曲を提供した。。といった控え目な紹介に留まることが多かった。そこで今回は彼女は関与した作品は勿論ゲーリー・ゴフィンがキャロル以外のライターと組んだ作品や、モンキーズのメンバー、マイク・ネスミスと共作した作品等、キャロルのおもいっきりモンキ-ズでの全仕事を探ってみたい。
●「恋の終列車」、このデビューアルバムに「ゴフィン&キング」のコンビは「希望を胸に」という非常に魅力的な曲を提供している。この曲はモンキーズのデビュー曲「恋の終列車」のB面としても発売されA面に負けない人気を呼んだ。しかも凄いのはバック・ミュージシャン。トミー・ボイス&ボビー・ハートの名コンビに加え、アレンジャーはレオン・ラッセル。タイトル通り希望で胸踊る旋律だ。
また「マイク・ネスミスの良い仕事」の時にもご紹介したが「ゴフィン&キング」にマイク・ネスミスを加えた3人供作の「スイート・ヤング・シング」も聴きもの。この曲を作曲した時には、お互い「良い曲を作ろう」という意識が強すぎ、キャロルとマイクが喧嘩腰になり、キャロルが泣き出してしまったという話も聴いた事が有る。
(それを見たディビー・ジョーンズも泣き出したとか。。)
これに懲りたのか、以後このような3人供作は無い。それだけに貴重な作品といえる。
このアルバムにはゲイリー・ゴフィンとラス・タイトルマンのコンビによる佳曲「アイル・ビー・トゥルー・トゥー・ユー」という曲も収録されているが、この曲実は「イエス・アイ・ウイル」というタイトルで既にモンキーズの吹き込みの1年前にホリーズが取り上げていたのだが、この曲のボーカルを取った、デイビー・ジョーンズがその事実を知ったのは23年後という面白いオチがある。(しかもその事実を聴いたのはデイビーの奥さんからだった。。)
●以上の3曲を収録したモンキーズのアルバム・ジャケットはこれである。(ここに掲げたCDは特別編集版なのでご注意を)
- The Monkees/The Monkees
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このオリジナル・アルバムからはこの3曲がキャロル関係曲だが、後年ワーナー社から再発された本アルバム(CD)には「ゴフィン&キング」による「アイ・ドント・シンク・ユー・ノー・ミー」という素晴らしい曲がボーナス・トラックで収録されている。この曲は元々TVシリーズでも使うつもりで録音されたもので、個人的にも屈指の名曲と思うのだが、何故か没となってしまった。このアルバムに収録されたのは、ミッキーとマイクがボーカルを取ったバ-ジョンだが、次アルバムの「モア・オブ・ザ・モンキーズ」(ワーナーからの再発盤)にはピーターがボ-カルをとったバ-ジョンがボーナス・トラックで、さらには「ミッシング・リングスVOL1」にはマイクがひとりでボーカルを取ったバージョンと何と3種類のバージョンがあるが、いずれも正式発売はされなかった。(個人的にはピーターのバージョンが気に入っている)これはモンキ-ズ・ファンの間でも七不思議の一つだ。尚マイクが一人で歌ったバージョンは「ヘッド・クォーターズ」に収録されたマイクの作品「君はひとりぼっち」と非常に似たアレンジとなっているのも不思議な事実。
●次は「ゴフィン&キング」の最高クラスの名曲が2曲も収録されている「Pisces, Aquarius, Capricorn & Jones Ltd」(邦題:スターコレクター)に収録されている「スター・コレクター」と「プレザント・バレー・サンディ」のご紹介だ。(これが個人的にも一押し作品)
「スター・コレクター」は日本だけでシングル発売されたが、結構ヒットした記憶がある。ちょうど発売された1969年ごろは、フォークルの「帰ってきたヨッパライ」が売れていた頃(以前の加藤和彦氏関連の記事ご参照)で、同じような早回ししたような声が冒頭に入るこの曲には親しみを覚えた。
しかし凄いのはそれだけではなく、後半シンセサイザーのかなり長大なソロやフリー・ジャズのようなドラム・ソロが入っている後半部分。未だプログレの言葉など未だ無い時代の非常にプログレッシヴな作品。そしてもう一つの「プレザント・バレー・サンディ」は文句なく大傑作。これもシングルで発売されたがボイス&ハートの作品「恋の合言葉」のB面として発売されたが、A面同様話題を呼んだ。この曲も後半どんどんサイケになっていくが、非常に魅了的なナンバー。ボーカルを取ったミッキーも最も好きな曲といっている。出だしの魅力あるギターのイントロはチップ・ダグラスが考案したとされる。尚この曲のキャロル・キング自身のセルフ・カバーもある。個人的な意見だが、これは60年代全体を見ても屈指の名曲と思う。
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●キャロル・キングがセルフカバーした「プレザント・バレー・サンディ」収録のアルバム。ライブ・アルバムだが、イントロのギターもモンキーズと同じスタイルで演奏している。
- The Living Room Tour/Carole King
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●モンキーズの後期のアルバム「インスタント・リプレィ」にも非常に素晴らしい作品が、2曲ある。「彼女なしには」と「夢のない男」の2曲だ。前者はボーカル&アレンジ・プロデュースはマイク。冒頭ご紹介した「アイ・ドント・シンク・ユー・ノー・ミー」を録音した頃の作品で、やはり没になっていたものだった。何ゆえこんな素晴らしい曲が使われなかったのかは謎。
もう一つの「夢のない男」のボーカルはデイビー。アソシエイションでお馴染みのボーンズ・ハウがプロデュースした。ボーンズ・ハウはドラマーでもあったので、この曲もドラム、そしてベースのリズム隊がすこぶるカッコイイ。この曲はキャロル・キング在籍の「シティ」でも「夢なき男」の邦題タイトルでセルフ・カバーされている。
- Instant Replay/The Monkees
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- 夢語り(紙ジャケット仕様)/シティ
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●さて今回最後の「キャロル・キング」の名作を収録したモンキーズのアルバムはこちら。
- Head (1968 Film)/The Monkees
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このアルバムには「ゴフィン&キング」の「ポーパス・ソング」と「キング&トニー・スタイン」による「アズ・ウィ・ゴー・アロング」という名曲2曲収録。「ポーパス・ソング」はシングルでも発売されたので、他のベスト・アルバムにも収録されているが、「アズ・ウイ~」はこのアルバムでしか聴けない超名曲だ。ボーカルのミッキーが、5/4拍子というリズムの難しいこの曲を見事に歌っている。しかもバック・ミュージシャンは、キャロル・キング自身の他、ライクーダーやニール・ヤングなど超豪華。
「ポーパス・ソング」は前述のようにシングルでも発売されたが、曲の出来に比べて驚くほどヒットしなかった。非常にサイケな一面もあり、全く時代が追いついていなかったとも思える。しかし1990年以降何故か評価されだし、この曲をカバーしているグループもいる。
またカバーではないが、このアルバムを参考にして作られたJ-POPの名作もある。それがこの作品。
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●フリッパーズ・ギターのこの作品、タイトルにも「ヘッド」の文字があるが、1曲目にある「ドルフィン・ソング」は明らかに「ポーパス・ソング」を意識したタイトルだ。
(ドルフィンもポーパスも邦訳は「いるか」だ)
最後にこの頃、キャロルはもう一曲、トニースタインと「ルック・ダウン」という曲も作っているが、残念ながらお蔵入りし、後年「ミッシング・リングス3」に収録されることになった。