【書籍紹介】 『定本 物語消費論』
(Amazonではマーケットプレイスに出品があるのみでした。絶版なのでしょうか…)
【コメント】
かなり古い本で、1989年刊行の書籍。
著者は社会学寄りの批評家。
80年代後期~90年代初頭のいわゆるバブル期は、
広告業界がクチコミに注目した時期でした。
業界に80年代前半のニューアカデミズムの影響が残っていた当時のこと、
クチコミや噂の発生についても社会学や民俗学のモデルを用いて
理論的に解析しようとしていたようです。(たとえばこれ )
この本の著者も噂や都市伝説について研究をしていたこともあり、
バブル期には代理店で勉強会の講師として出入りしていたそう。
(この本 なんかにはその頃の状況が書かれています)
この本では、いかに都市伝説(噂)をマーケティングに活かすか
ということが書かれています。
「ビックリマン」の大成功をしきりに引き合いに出すこの本の著者は、
「大きな物語」の断片を人々に分け与えることが
物語マーケティングの成功要素だと語ります。
巻末の文庫版あとがきにもありますが、この情報を積極的に収集し、
その情報自体を消費することへの欲望、
また情報を発信することへの欲望、といった「インターネット的欲望」は
すでにこの四半世紀前に用意されていたことが感じられます。
その点で、実は古いようで現代とつながっている書物だと思います。
「物語消費論」とちょっと固めのタイトルがついていますが、
大塚氏が執筆した雑誌記事などを集めたもので読みやすい書物です。
<メディアマーケティンググループ 新井 俊悟>