食事訓練と、ヨルダン流の狭間。 | marimo's blog

marimo's blog

青年海外協力隊で、作業療法士としてヨルダンに派遣されています!

文化も習慣も全く違うこのイスラム社会で、
山あり谷あり奮闘しながら、2年間の活動を綴ります!

今日は久しぶりに食事介助を指導しました。
トピックは生活の中でも重要な『食』について。


食事はOK、問題ないと言っている親たちに、頼んで食事を持って来てもらうと、OKとは言えないケースが殆どなのです。

理由は、親が身体機能にばかり目を向けているから。
日常生活の中での不自由なところは〝移動”だと思っている親が多いのです。
日常生活の中の質問を細かく聞くと、埋もれている問題点がびっくりするほどゴロゴロ転がっています。

私は作業療法士ってのは、患者を取り巻く生活に関わる全ての問題に、家族や環境を巻き込んで取り組んでいく職種だと思っています。

そのため、領域はとても幅広いです。


子供の母親に
食事の問題は?と聞くと、ない(よく食べるの意)と言う親も多いのです。

質問を変えて、

食事の際の手の使い方は?と聞くと『介助している』と答えます。
食事の際の嗜好は?と聞くと、『ミキサー食しか食べない』と答えます。


‥‥

問題を顕在化させるには、質問者にも技量が問われる
のです。

(この点、飲み込みの早いカウンターパート、最近はHowの部分も聞くようになってきている気がするので、嬉しいのです。)

この問題に取り組んでほしいと思った親は食べ物を早速持ってきます。
そうでない家族は、介助をし続けることを選択します。

この、介助という概念についてですが、

日本では少しでも自立を目指して、少しでも介助量を少なくするようにリハビリを行います。

この国では、できるけど全部介助をする、極力動かさない等のその家独自のルールに基づいていることが多いのです。
理由は、障害者家族のコミュニティーや知識が無いからなのではないかと感じています。



****

そう、一昨日前の出来事を思い出しました。

近所の道を歩いていたら、顔全体にニット帽を深くかぶせられたまま、車椅子に座らされて太陽の方を向けられている子供(脳性麻痺?)がいたのです。
どういう意図があってこんなことをしているのかは謎ですが、手も不自由で、ただバタバタしてニット帽に手をかけようとしていることだけは分かったので、ニット帽から目が見えるようにだけしてあげました。

それから彼はバタバタすることもなく落ち着いたのですが、これも家族が良かれと思った特異な日光浴なのかと思ったらなんだか悲しくなりました。
私がしたことは家族からしたら余計なお世話だったのかもしれないけど‥、落ち着いたところをみると彼はすごく嫌がっていたと思います。

障がい児を家から外に出さないようにする人も多いこの国。
センターに通ってきている人はごく一部で、近親相姦も多いこの国では障がいを持った人の数ってものすごく多いんじゃないかと思っています。

そのため家独自の習慣がその子供にとって良くないものであっても、病院やリハビリなどの医療機関にかからないとそれが発見されないことも多いのかな、なんて感じました。


****


話は戻って、

私の活動先でも、色々な親がいます。
寝返りの練習で、手を万歳スタイルにしている親。
伸展パターン(脳の信号異常により、体が反ってしまう)の強い子に逆ブリッジをさせて喜んでいる親。
腹ばい移動を嫌がるからと言った理由で、家の中を全て仰向けで移動させている親。
背骨の変形が強いのに、クッションを使わずにそのまま寝かせている親。

ただそれは決して放置とかではなく、どの親も愛情たっぷりなのです。
問題は、知識が少なくて我流が多いという事。

勿論、どんどん学んでセラピストから様々な吸収し、次は何に気を付ければ良い??と熱心な方もいるのですが、

この地域の宗教も絡んだ特性上、医療界での常識をヨルダンの常識として広めるには時間を要しそうです。

カウンターパートもそういった問題点を問題だと思っていることが殆どで、この点は安心しているのですが、どうやって一つずつ解決していくのかは一緒にその都度話しています。



因みに、今日のケースは、
母親の介助でなかなか食べてくれない子供でした。

私が前の職場で習った普通の介助でもぐもぐと食べてくれるので、その違いにびっくりされたのです。

『なんであなたの介助だと食べるの?教えて欲しい』

と言われ、ポイントを指導して良くなってきたと思って、一度離れて、帰り際にもう一度寄ってみると我流に戻っていました。




なぜ『我流』になるか?


恐らく、
『なぜそのポイントが必要なのか』
これをアラビア語で100%伝えられなければ、どの親も動きだけを真似するだけの無意味なものになるためなのでしょう。
カウンターパートに訳してもらっても、伝わりきっていないこともよくあります。

この点、私の反省すべき点でもあります。

食に対する課題、山積みです。