第320話 面接 | らぶどろっぷ【元AV嬢の私小説】

第320話 面接

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夜になると

私はフルメイクをして毛皮を羽織り

杏奈の店へと出かけた。


その日の国分町はとても賑わっていた。


寒空の下で、

セーラー服やナース服のコスチュームの上に

膝まである大きなダウンジャケットを着たホステス達が

ずらっと連なって並んでいる。


声をかけられるたびに足止めをくらっているサラリーマンや酔っ払い。

道路にはおびただしい数の禍々しいビラが散乱している。


国分町の風物詩ともいえる光景を横目で見ながら

私は早足で歩いていく。


杏奈のお店は国分町から一本入った雑居ビルの中にあった。

小さなお店だけど内装やインテリアは洒落ている。


「まりもちゃーん!」

黒のロングドレスを着た杏奈が私に向かって片手をあげた。


彼女には

まだ二十歳とは思えないような女の色気がある。


「杏奈~ ひさしぶり」


「まりもちゃん、こっちで一緒に飲もう。

今、まりもちゃんの話をしてたところだったんだ。

こちらは田中さん」


杏奈は自分のついていた客席に私を呼んだ。


紹介された田中という男は一人で来ていて

三十代前半の人が良さそうなデブだった。


奥の席に4人組みの客がいて

他のホステス達はそっちの相手をしていた。


「お邪魔してもいいの~? はじめまして。 まりもです」


私はにこにこ笑って田中の隣に腰掛けた。


「ねー! まりもちゃん、可愛いでしょ?」

杏奈が田中に向かって言った。


「おう! マジで可愛いな!」

田中は私をまじまじと見て何度も頷いた。


「この後、ラトゥール系列を紹介してあげるんだ。

まりもちゃん、店長に電話したら今日面接してくれるって!

うちの店が終わったら一緒に行くって約束しちゃったんだけど、いいよね?」


「話早い~! 超助かるよぉ。 本当ありがとぉね!」


「なになに? まりもちゃんはなんで東京から出てきたわけ?

仙台から上京してホステスになる子は多いけど逆はめずらしいよなぁ?」

田中が不思議そうに尋ねた。


「実は~ お父さんの転勤に付いてきたんです」


「そーなの? なんで杏奈のことは知ってるの?」


「少し前に、お父さんが仕事の下見でこっちに来た時、私も付いてきたんですけど

その時にネイルサロンで偶然杏奈ちゃんと隣り合わせて、それで友達になったんです」


私は適当な作り話をした。


「そうそう、まりもちゃんこっちに友達いなくてさみしいんだって声をかけてくれたんだよね」


杏奈は話を合わせながら

私に薄めの水割りを作ってくれた。


「うん。 こっちに知り合いってまだ杏奈ちゃんしかいないんです。

正直、ホステスやるのも不安で… お客さんつくかなぁ~」


私は眉根を寄せて弱々しく溜息を吐いてみせた。


「君なら大丈夫だろー! すぐに売れっ子になりそうだ」

田中は私を励ますように言った。


「ありがとぉ。 乾杯」 

私は小首を傾げて田中とグラスを重ねた。


「たしかに知らない土地でホステスするって心細いかもね! 

そうだっ! たーちゃん、初日はまりもちゃんと同伴してあげたら?」


「おお! いいぜ」

田中は間髪いれずに快諾してくれた。


「ぇぇ~! いいんですかぁ? めちゃうれしぃ♪」

私は田中の手を握ってお礼を言った。


デレデレの田中の後ろで杏奈がパチンとウィンクをする。


私は杏奈のアシストに感謝した。


ラストまでいた田中はいい具合に酔っ払って

みんなが見送る中ご機嫌な足取りで帰っていった。



私は杏奈と二人で

面接の待ち合わせ場所に向かった。


少し遅れてやってきた黒服の男は

黒髪に眼鏡をかけていて礼儀正しく真面目な人に見えた。


一目みて私のことを気に入ってくれたようで

すぐに「週に何回働ける? 経験はあるんだよね?」と聞かれた。


「経験はあります。 休みは日曜日だけもらえれば」私は答えた。


「わかった。 レギュラーでいけるんだね!

クラブとキャバクラどっちがいいかな? 君だったらどの店でも問題ないよ!

って言ってもよくわからないだろうから、ざっと説明をするね


まず、うちのチェーン店はキャバクラが3つ、クラブが3つある。 

『スマイリー』『セレクション』『ラトゥール』『セラフィ』『ステア』『Ren』


『Ren』は唯一ママがいる店なんだけど

ホステスの年齢層がやや高いからまりもちゃん向きではないね。


格下のキャバクラもありえないから

『ラトゥール』『セラフィ』『ステア』 この中から選ぼうか」


黒服の男は大きなバインダーを広げて

中から店のパンフレットを取り出し私に差し出した。


「えっと… てことは、この『ラトゥール』って所がキャバクラで

こっちの『セラフィ』と『ステア』がクラブってことですね?

杏奈が働いてたのはラトゥールだったっけ? 

時給とかはどうなっているんですか?」


パンフレットの中で微笑むホステスは

綺麗な子ばかりだった。


「時給はね、女の子によって決めるんじゃなく、完全に店ごとで設定されてる。

下のキャバクラから店のグレードが上がるごとに時給は1000円アップ。

〆は週ごとで、指名、同伴のポイント数で時給がスライドいていくシステムだよ」


「なるほど。 なら、『ステア』が一番稼げるってことですね?」


「単純計算だとそういうことになるね。

しかし、うちの看板店は『ラトゥール』で客数が圧倒的なんだ。


『ラトゥール』でデビューして客をたくさん掴んでから

『セラフィ』『ステア』という順にあがっていく。

これが売れっ子ホステスになるための王道ではあるよ。

いわゆるエリートコースだ。


丁度最近ホステスの移動があってね

ラトゥールのトップ3がクラブに移ったばかりだからチャンスではあるよ。


確かに時給はクラブよりも安くなるけど、とにかくこの店はフリーが入るから

クラブで他のホステスの指名客の枝を拾うよりは客捕まえるのは楽だと思う」


「なるほどぉ… 

う~ん。 ちょっと電話かけてもいいですか?」


私はいまいち判断がつかず、俊っちゃんに電話をいれた。


「あのね、今面接してもらってるんだけど。 

ラトゥールか、セラフィか、ステア、どこでもいいって言われてるの。

仙台では、どこの店のNo1ホステスが一番ステータス高いのかな?」


「う~ん、ステータスとかわかんねーけど

知名度があるのはやっぱりラトゥールじゃね?」

俊ちゃんが言った。


「ん、わかった。 ありがとう」


私は電話を切ると「ラトゥールで働きます」と宣言した。


「OK! じゃラトゥールのシステムを説明するよ。

ラトゥールは曜日ごとに制服が決まってる。 

ニュー着物、チャイナドレス、ボディコンとかまあいろいろあるんだけどね。

どの店にもスタイリストがついているから

出勤前にメイクルームに入ってもらうことになってる。


次にポイントの説明だね。

同伴が2ポイント、本指名が1ポイント、場内指名が0.5ポイント。 

うちはドリンクバックや延長バックはない。 女の子がえげつなくならないようにね」


「なるほど。 じゃあ、お客さんが1時間いても3時間いても指名は1ポイント。

ホステスがドリンクをオーダーしても、客がボトルを入れてもポイントはつかないってことですね?

ポイント加算は純粋に指名と同伴のみなんだ」


「そういうこと。 あとは付回しに任せればいい。

ちゃんと指名が取れるように回してあげるから心配はいらないよ。

働いていればすぐに慣れると思う。 大丈夫、 君ならうまくいく。 保障するよ!

で、いつから働けるかな?」


「明日からお願いできますか?」


「もちろん! じゃあ、明日出勤の前に事務所でミーテイングをしよう。

ラトゥールの担当を紹介するよ。 僕は今はクラブの方にいるかささ。 4時に来られる?」


「4時?! まだ寝てますよ~」


「あぁ、 うちはね、レギュラーは他のホステス達の見本になるために

一番早く出勤してもらうことになってるんだ。 

レギュラーはみんな4時半までにはメイクに入っているよ」


「えぇぇぇ… ずいぶん早いんだなぁ…

ちょっと融通してもらえないんですか?」 私は肩をすくめた。


「頑張ろうよ! うちは基本的に女の子を平等に扱ってるからね。

ラトゥールは女の子の在籍が100人クラスだし、全店舗の在籍人数はその5倍だ。

誰か一人をえこ贔屓すると収集がつかなくなるからね。 理解して欲しい」


店長の力説に私はしかたなく頷いた。


「……わかりましたぁ

てか、私、同伴予定なんですけど、ミーティングってどのくらいあるんですか?

お客さんとは何時に待ち合わせればいいんだろ?」


「同伴? 初日から同伴は快挙だね! 本当、君には期待してるよ
ちなみに、月にいくらくらい稼ぎたい?」


「う~ん… 最低でも50くらいは」


私がかなり控えめに答えると

店長は「それは余裕すぎるんじゃないかな?」と笑った。


「そうですよね。 やるからにはNo1を目指します!」

私は意気揚々と顎をあげた。


「頼もしいね」

店長が満足そうに言い、バインダーをバンっと閉じた。


私にはやる気も自信もあった。

目標はラトゥールのNo1ホステスになること。


自慢の彼女になって俊ちゃんに喜んでもらいたい。

その一心だった。


年内駆け込み!この章おしまいです~。 次章は場面はガラっと変わってホステス編。

お正月中に挨拶文は書く予定なので遊びにきてくださぃね!

全国らぶどろっぱ~諸君!今年は本当にどうもありがとう! 来年もよろしくね! 良いお年を^^

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