第245話 奇跡
たぶん私は
どうしても自分に罰を与えたかったのだと思う。
ユウをあんな状態にまで追い込んでしまったこと。
そして
二度目の中絶をしたこと。
自分を許すことが出来なかった。
だけど
ユウとの別れを引き受け
覚悟の一歩を踏み出した私に神様が与えたものは
罰ではなく祝福だった。
思いもしなかったことがおこったのだ。
正面から不安に体当たりしたつもりが
私はもう不安の中にはいなかった。
不安はすでに後方に遠のき
私はそこを通り抜けてしまっていた。
そして
私の手の中には
キラキラと眩い光を放つ
輝く宝石が授けられていた。
それはずっと私に欠けていたもの。
決定的に欠落していたものだった。
「良心」 「道徳」 「誇り」
私の中にもちゃんとあったんだ。
綺麗な心が。
その答えは
私にとって何よりもの “救い” だった。
人間しか持ち合わせていない自由意志で
誰に見せるわけでもなく
自分の利を優先させずに
正しい決断を下せたこと。
それは
私にとって初めてのことだったから。
私は今まで
人を傷つけても心が痛まず
自分を傷つけることさえわけなくて
欺き、踏みつけ、搾取することばかりを考えてきた。
愛した男達も結局はいつも道具でしかなかった。
自分の幸せのために利用してきただけだった。
依存と執着が織り成す幻影に翻弄され
いつのまにか虚勢を張ることばかりを覚えてしまった。
だけど今
私は自己保存の呪縛から解き放たれようとしている。
涙の熱さを感じながら
大きな愛の内に抱かれているという安心感が全身に広がっていった。
絶え間なく湧き溢れる涙は
愛の源と繋がっている証のように思えた。
自尊心が回復していくのを感じた。
それは
今まで感じたことのない真の安堵だった。
絶望を受け入れた時
神様は希望の光を授けてくれた。
表と裏、光と闇、絶望と希望、不安と安心
対立、断絶しているはずのものが同時に何の矛盾もなく現れるとき
人は神の存在をありありと感じるのだと思う。
絶望は希望へ
不安は安心へ
極から極へと世界がひっくり返る
そんな奇跡の中に私はいた。
全ての現実には
いきさつの奥に隠された意味があるのかもしれない。
恐れずに前に進めばいいと思った。
過ちや後悔を乗り越えて
精一杯生きていれば
神様はきちんと道を開いてくれる。
これは
私が自分の手で掴み取った真実だ。
この世で唯一確かなことと
この時の私には言い切ることができた。
私の手の内にある輝く宝石達は
私の中でずっと泣いていた子供の私自身だ。
いつしか
生きていくために
自分で封印してしまった「良心」や「道徳」
私達は
ここにきて再び出会えたのだ。
私は自分自身に謝った。
本当なら私と一緒に
この子もきちんと育っているはずだったのに。
これからは
この宝物を少しずつ励まし育んで
一緒に大人の魂に成長していけばいい。
本当に大切にすべきものを軸に生きていこう。
ユウには率直に自分の気持ちを伝えることにした。
どうなるかわからないけれど
自分の今の気持ちを正直に話そうと思う。
私はユウのことを愛している。
今までは
愛しているからどうしても一緒にいたかった。
だけど今は
愛しているからこそ離れることを選んだ。
愛は形を変えてゆくものなんだ。
がぁーーーーー！
なんだか偉い大袈裟なことを言ってるようですが・・・。この時から私はずっと今も変わらず信仰を持っています。特定の宗派があるわけではないんだけどね。「都合よく神様を見つけたもんですね！」なんて思う人もいるかもしれないけどさ。確かにこの時私は精神的に極限状態だった。だから、こういう境地に至ったのかもしれない。宗教とかって精神医学ではしっかりと病理として説明がつくらしいので、ある意味「紙一重」状態だったのかもしれません。 が、どうあれ私にとっては奇跡だった。 人間って追い詰められると道が開けるもんだよ。 だからとにかく恐れず進めだ！
私の信仰というのは、別に神様に縋るわけでもなく救いを求めているわけでもなくて、単純に「神様を知ってる」というだけのこと。いつも感謝と祈りは忘れない。 意外かな？
でもね、もちろん今後の私が聖人のようにいきなり変わるわけではない。良心や道徳を自分の内に見出したことで私は余計に葛藤し悩み悶絶することになるのである。まぁそのへんは今後書いていきます。ドラッグについてもこれで終わりではないからね。
明日はGLAYのライブ♪心のお洗濯してきまーす☆
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