第236話 降板 | らぶどろっぷ【元AV嬢の私小説】

第236話 降板

宝石ブルー携帯からの目次を作りました  


スピードがキマっていると

お酒をいくら飲んでも酔っ払わない。


飲んでも飲んでも

鮮明な意識状態が保たれるから不思議だ。


アユとサヤカは

ドでかいスピーカーの目の前で

超絶ハイテンションで踊りまくっている。


私は

ユウのことが気になって

いまいちノリきれず

やっぱり先に帰ることにした。


二人に別れを告げてから店を出ると

目の前の道ですぐにタクシーを拾った。


バッグの中から携帯電話を取り出す。


緑がかった液晶画面に

「着信あり」と表示されている。


ユウが

帰りの遅い私を心配して

電話をしてきたのかと思ったけれど

それは違った。


不在着信は

連続で何十件も

全てジイヤの番号で埋め尽くされていた。


嫌な予感がして胸がざわついた。


煙草に火をつけ
着信の時刻を一つ一つ確かめていく。


そのとき電話が鳴った。


「もしもし?」


「まりも! 大変なことになってるぞ、 おまえ、今どこだ?」


ジイヤの口調が

ただごとではない何かを暗示している。


「え? アユとサヤカと六本木で遊んでて・・・ 今帰りのタクシーの中だけど?」


「ロケバスの中で薬の話したか? 何を話したんだ?!」


「えっ・・・ どういうこと?」


嫌な予感が

急速に現実味を帯び始める。


私は

煙草を灰皿で揉み消すと

携帯電話を右手に持ち替え

ジイヤの話に集中した。


「おまえさん達が帰った後に

番組のプロデューサーから呼び出されたんだよ。

サヤカとアユとミクの事務所の社長も一緒にな」


「うん・・・」


ジイヤの話では

テレビ東京のお偉いさんと

ギルガメのプロデューサーの二人から

有無を言わさず「番組降板」通告を受けたのだと言う。


理由は

ロケバスの中でのあの会話だ。


「どういうこと? 一体、誰から漏れたわけ?」


事の大きさにくらくらしながら

私は状況を整理しようと勤めた。


あのバスの中には

私とアユ、サヤカ、ミク

その4人しかいなかった。


サヤカとアユは

今も何も知らずにヴェルファーレで踊っている。


途中で帰ったミクが?

でも、それならあの子も・・・。


私は

考えながら混乱した。


「プロデューサーは、バスの運転手から聞いたって言ってる。

でも、他の事務所のやつらと話してたら、どうもミクのマネージャーがあやしいんだよ。


とにかく、もうどうにもならないぞ! 

業界ではドラッグは最大のタブーだ。


東スポあたりにに嗅ぎつけられたら

スポンサーが下りて番組自体の存続すら危うくなるって

テレ東のお偉いさんから、俺達がえらい剣幕で怒鳴られたんだぞ!

ったく・・・ 頭にくるな・・・ 若造がっ!」


ジイヤが

とても大変なめにあった事が

電話口から伝わってくる。


いつも温厚なジイヤが

相当なテンパリっぷりで

私は何よりもそのことに驚いていた。


「ごめん・・・。

あのさ、運転手に聞こえてたとは思えないよ・・・。

うーん・・・ でも・・・ミクも降板なんでしょ?

だったら、ミクのマネージャーって事もないんじゃないの?

本当に私達、4人ともクビに?」


私はやっぱり

話の出所が気になった。


「今、どこの事務所も火消しに必死だ! とにかく何を話したのか全部教えろ!」


「えっと・・・ それは・・・」


とてもあの時の会話の全貌を

ジイヤに教えることは出来なかった。


私は

絶望的な気持ちで溜息をついた。


ギルガメの降板は

もうどうにもならない現実だと受け入れ始めていた。


あの話が漏れた以上

どんな言い訳をしても無駄だろう。


テレビ局側が

地雷とわかりながら

私たちを使い続けるはずがない。


代わりはいくらでもいるのだから。



・・・終わったな・・・




私達は今まで

ギルガメのおかげで知名度を保ってきた。


どの事務所も

ギルガメを足がかりにして

さらなるメディア進出を目論んでいた。


女の子同士、事務所同士の

見えない足の引っ張り合いも多々あった。


でも今回のことは

浅はかで迂闊だった私達の自業自得だ。


当然、他のテレビ局にも

噂はすぐに広まるだろうし

仕事の幅はぐんと狭まるに違いない。


この降板が及ぼす影響は計り知れなかった。


「・・・どうしよう・・・」


私は途方に暮れてジイヤに言った。


「知るかよっ! ばかやろー!」


ジイヤが切れて

電話も切れた。



あーぁ・・・ やっちゃったなぁ・・・

でも・・・ なるようになる・・・かな・・・


私はそう開き直って

深く考えないようにした。


スピードのせいで妙に冴え渡った頭で

全然別のことを考え始めた。


現実逃避するしかなかった。




ヒカルはパクられて私達は大事な仕事を失いました。

こうやってドラッグは、確実に何かを奪っていくのだと思います。

一番に損なわれるのは「社会的信用」や「社会的立場」だよね。 

この章はおしまいです^^ 明日はクリスマスですね☆ みなさん良いクリスマスを♪
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