第223話 引き裂かれた自己 | らぶどろっぷ【元AV嬢の私小説】

第223話 引き裂かれた自己

宝石ブルー携帯からの目次を作りました  (過去記事、最初から読んでみたぃ人はどうぞ♪)



「お風呂入ってくる!」


ユウに言うと

私はバスルームに向かった。


どうしても一人で思案に耽りたくなったのだ。


もやもやと私の内に広がりはじめた何かに

きちんと形を与えてやりたかった。


一人きり湯船に浸かって目を閉じた。



私はSEXでイクことが出来ない。


しかし

エクスタシーがどういうものであるのかは

とっくの昔から知っている。

小学校4年生の時に知った悪癖を

私はずっと続けている。


まだ男性体験のなかった幼ない頃は

好きな男の子に胸を揉まれる事などを空想していた。


16歳で初体験を済ませてからは

彼氏とのSEXを思い描くようになった。


こんな風に抱いてもらいたいだとか

いかにも現実に即したシーンを想像したものだった。


その頃も

SEXでイクなんてことは無縁だったけれど

それは不自然なことではなく

ごく当たり前の現象なのだと思っていた。


私はまだ経験不足なだけで

時がくればちゃんと

SEXでイケるようになるのだと信じて疑わなかった。


私には薄々感づいていることがある


思考はどんどん私の深部へと侵入していく。


ずっと目を背け続けてきたこと


一つの「なぜ」は

理由を探して過去を巻き戻していく。


行き当たる記憶

それは「援助交際」だった。


私はスピードのせいで

無意識に逃げ続けてきた

自分の根底にあるものと対峙することになった。


17歳

はじめて援助交際をした時。


あの日私は

心と体が乖離するという体験をした。


まるで別の自分が行為に及んでいるかのように

すべてのリアリティが失われ

フィルターをかけられた世界の中にいるようだった。


その時私は

嫌なSEXを引き受けてくれるもう一人の自分を作り上げ

自分自身は彼女を観察するというポジションを取ったのだと思う。


もちろん私は

本物の多重人格などではないから

知らない間に彼女が勝手にSEXを終わらせてくれるわけではない。


意識は私の側にありながら

感情や思考や感覚の一部がオフになるのだ。


私は生理的嫌悪感も倫理的背徳感も感じることなく

自分の身体でいくらでもお金を稼ぐことが出来た。


彼女がいなければ

私は援助交際もAV女優も出来なかっただろう。


私には彼女が必要だったのだ。


彼女はスケープゴートのように

嫌なことの一切を引き受けてくれた。


しかしそれは

自分自身に呪いをかける行為に他ならなかったのだ。


引き裂かれた自己を抱えながら

私は多くの矛盾に苦しむことになってしまった。


彼女は

別人格などではなく

分断された私の一部だからだ。


彼女は

私の内にありながら独立している。


愛する男と関係を持つ時

彼女は私の耳元でこう囁いているのだ。


声なき声で呪いの言葉を。


「私に嫌なSEXだけ押し付けておいて

あんただけ好きな男と愛のあるSEXですって?

そんなの私は許さない! 気持ち良くなんてさせない!」


そうか

そういうことだったのか


これは彼女からの復讐なんだ。


ああ

私の肉体の主人は本当に私なのか?


人は自分自身に復讐される生き物なのだ。


その考えは天啓のように私の上に降り注いだ。


胸が苦しい。


息が詰まりそうになりながら

私はさらなる心の深淵へと降りて行った。




うーーむ。この時にここまで深く洞察できたかは定かではないです。

多分に今の私の分析が含まれているかも。

なんつーか・・・実際、今も苦しい。 この手の内容は今だに私の心にすごい係数をかけてくるんだなぁ。

まだ乗り越えられていないのかもな。 興味深いことではある。 自分と向き合う作業はもう少し続きそうです。


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