第040話 逃避 | らぶどろっぷ【元AV嬢の私小説】

第040話 逃避

あいつの事

もっとめちゃくちゃにしてやるんだった。


私はあれだけしても

まだ足りないと感じていた。


だって仕方ないでしょ?

私だってあんた達にめちゃくちゃにされてるんだから!

心がそう叫ぶ。


あれが世の中では偉くて立派な人間なんだ。


信じられない!

ありえない!

行き場のない想いを全て吐き出してしまいたかった。


でも私にはそうさせてくれる人も場所もない。

こんな時にどうやって泣けばいいのかもわからない。


美咲の事を想う。

美咲ももしかしたらこんなつらい思いをしているのかな。

『たるぃ』という口癖の裏には

やりきれない感情をいつも抱えていたのかもしれない。


私達はいつでも他愛ない話しばかりしていたけれど

本当は一緒にいるだけで上手に傷を舐めあっていたんじゃないか。

そう思うと切なくなって急に美咲に逢いたくなった。


私の上を何人の男達が通り過ぎていったのだろう。


たくさんのお金を手に入れた代償は大きかった。


心の奥には

鉛のように

重く決して溶けない感情が根付いていった。


『男は汚い』

『大嫌い』


大人になるのが怖かった。


この人のような大人になりたい。
そう思えるモデルになってくれる大人は
私の周りには一人もいなかった。


こんな大人にだけはなりたくない。

どいつもこいつも最低だ。


未来には少しも希望なんて持てない気になる。


どこに行ったらいいかもわからず

戻る道さえ見失ってしまった。


「誰か私を助けて。」

「お願い。ここから救い出して。」

「こんなはずじゃなかった!」


そんな心の悲鳴に気がつかないふりをして
私は毎晩刹那的に遊び歩いた。


私は闇雲に走り続ける事を選んだ。


夜の街に逃げ込めば
嫌な事は全て忘れられた。


綺麗に着飾って

贅沢な時間に身を委ねた。

それは確かに悪循環だったけれど

そうするしかなかった。


現実から逃げて
あらゆる痛みから逃げていた。


「今はこんなだけど・・・こんなの本当じゃない。」

「いつかは理想どおりの自分になるんだから。」

そう言い聞かせて。


欲望の河を流されたボートは

オールを持たぬまま

いつしか大海原に一艘だけ

浮かんでいた。


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