第031話 嘘をつかない瞳 | らぶどろっぷ【元AV嬢の私小説】

第031話 嘘をつかない瞳

混乱に耐えられず

今にも飛び出しそうな言葉を飲み込む。


平静を装い取り繕う私に
美咲は全く気がついていない。


鼻歌を歌いながら手帳に何かを書き込んでいる。


『認めたくない事と美咲は確かに向き合っているんだ!』


そう気がついて私は驚愕したのだった。


「まりも、このメロン美味しいね~」
「あ、うんうん。おいしぃ~」


「まりも・・・汁!垂れてるよ!あははは」
「あぁぁ・・ごめん!やだぁー。ティッシュちょー!」


美咲はいつもの笑顔と底抜けに明るい声とで

天真爛漫に振舞っているが

瞳だけはいつもと違っていた。


美咲がどこで何をしていたのか

その瞳が真実を告げている。


長いまつげが陰を落とす美咲の瞳は

あきらかに曇っている。


曇った瞳は

光を吸収も反射もさせず

ただ輝きを忘れた宝石のように

憂いの色を滲ませているのだった。


なんて正直な瞳。


ああ!

私は自分さえごまかしているのではないか?


ぞっとした。


その晩もいつも通りにディスコへ行き

朝まで踊り明かした。


私は美咲の言葉が脳裏に焼付いたままだ。


釈然としない気持ちをすっきりさせてしまいたい。


昼間の言葉の意味を
いや

『援助交際』について話してみようと思ったけれど

どうしても口には出せなかった。


何度か切り出そうとしたのだが

言葉が喉を通って口から出てくる事はなかった。


自分自身が『その事』に触れたくないのだから

言葉が出てこないのは当然なのかもしれない。


それは私と美咲の間でも
気軽に話せる『事柄』ではなかった。


恥ずかしい事だから?

格好悪い事だから?


いつでも一緒にいるのに

私達はしらじらしい暗黙の了解を抱えた関係なんだ。


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