第023話 享楽の海 | らぶどろっぷ【元AV嬢の私小説】

第023話 享楽の海

「あ~~!この曲大好きぃぃ!!」

「美咲、この曲かかると踊り激しいから!きゃはは」


「だって好きなんだもぉ~ん。振りもかわぃぃよねぇ?」

「うんうん。かわぃぃよね!」


享楽の海を
私達はパラパラと泳ぐ。


下界には興味などないというように
ホールには一切目も向けない。


お立ち台の上で宙を仰ぎ
それでいて手を抜かずに
完璧に踊りきるのだ。


何もかもが完全なまでの完璧さだった。


ああ。

気持ちいい!


たまに何も知らない一元のお客が
酔った勢いでお立ち台に上ってくる事があったが
容赦せずに肘や尻で付き落としてやった。


『ドカッ』


「なぁ~に今の?あはは」

「もの知らないガキだよねぇ~。ふふふ」


大音響の音に負けないように

私と美咲は大声でお立ち台の上でおしゃべりする。


「まりも必殺エルボー!ぶぶぶっ」

「きゃはは。だって邪魔なんだもぉ~ん」


大胆不敵な不良娘はここでも健在だ。


私達が席で一服している時でさえ
そのお立ち台に人が上ろうとすると
黒服達が慌てて静止する。


閉店まで踊りあかして
タクシーで寮まで帰る間
私と美咲は何も話す気がおきなかった。


脱力感と倦怠感で一気に疲れるのだ。


体はおもいきりグッタリと萎えて

心はすっかり空っぽになる。


生命力が全て蒸発してしまったかの様に。


それは決して踊り疲れたからではなかっただろう・・・。


でぃすこ




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