米、「再分配」巡り論争 富裕層課税、保守派は反発 | Excelsior

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経済格差の拡大が問題となるなか、誰から税金をとり、どう分配するかという再分配政策を巡る
論争が活発になっている。
信用不安で財政再建を迫られる欧州諸国ではイタリアやフランス、ポルトガルは富裕層に対する
特別課税を打ち出した。
米国でもオバマ大統領が富裕層課税を提案したが、企業経営者や保守派の反発を招いている。

 「これは階級闘争ではない」。
9月、オバマ大統領はそう断った上で、年収100万ドル(約7600万円)以上の富裕層には、
最低でも中間層並みの税率を課すというルールを提案した。

 富裕層の税率が低くなるのは、所得の多くを税率が低めの配当や株式の値上がり益に依存するためだ。
著名投資家のウォーレン・バフェット氏が富裕層増税を主張してきたことから、新ルールは
「バフェット・ルール」と呼ばれる。

 低所得層や労働団体、リベラル派の論客は新ルールを「公平さが増す」と歓迎する。
だが企業経営者や保守派は「米国の累進課税は既にきつく、経済の活力をそぐ」と猛反発。
オバマ大統領の言葉と裏腹に、論争は階級闘争の色彩を帯びる。

 景気低迷による所得と税収の落ち込みに急速な財政悪化が重なり、失業対策など社会保障費用も拡大。
政府と納税者、さらに納税者間での負担の押し付け合いが生じている。

 「税金は、お金持ちから」――。
9月中旬に始まり、3週間目に入った米ニューヨーク・ウォール街近辺のデモ「ウォール街を占拠せよ」
では若者が「Stop greed(貪欲をやめよ)」「企業主義ではなく、民主主義を」などの
プラカードを掲げる。

 大学で社会学を専攻するというモーゼス・アップルトン氏(24)は、9%台で高止まりする
失業率を念頭に「大企業ばかりがもうけ、搾取される人が増えている。グローバル化で企業の
選択が増えたこともあり、自国民がないがしろにされる傾向が強まっている」と話す。
一体感を失う社会と定まらない政策。
若者をデモに駆り立てるのも、そんな閉塞感かもしれない。



2011/10/6付 日経オンライン