前回記事 の続きです。

後半は、

・ヘンデル:オラトリオ「メサイア」HWV.56より第48曲(抜粋)(津堅さん)
・メンデルスゾーン:劇音楽「真夏の夜の夢」作品61より結婚行進曲
・マーラー:交響曲第5番嬰ハ短調より(1楽章冒頭)(高橋さん)
・ガーシュイン:パリのアメリカ人(抜粋)(津堅さん)
・ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」より プロムナード(高橋さん)、サミュエル・ゴールデンベルクとシュミレ(津堅さん)、バーバ・ヤーバの小屋、キエフの大門
・ヴェルディ:歌劇「アイーダ」より 凱旋行進曲
―アンコール―
サンダーバードのテーマ
トランペット吹きの子守歌
トランペット吹きの休日

と、おなか一杯の演目でした。

アリオス大ホール息子
(休憩中にホール見学)

マーラーの5番、高橋さん、神のような演奏でした。
安心して聴ける奏法とは裏腹に、深刻度この上ない葬送行進曲でした。
新鮮な解釈ですが、なんとも心地の良い、違和感の無い演奏、
と言うか久々にトランペットでゾクゾクしました。
あと少しで人間が触れては行けない領域に入る勢いでした。
やばいです。この辺でとどまった方がいいと思います。
これ以上完璧な演奏をして、日本人が「宇宙」とか「神」なんて感じてしまうような事があれば、
伝説のG.ヴァント指揮/北ドイツ放送交響楽団の2001年のライブツァーのブル9になってしまいます。
あの仕事は、天に召される直前におじいちゃんがやるべき仕事だと思います。

演奏とは裏腹に、『トランペット奏者の醍醐味とは?』と言う茂木さんの質問コーナーでは、

『演奏が終わった後、仲間と一緒に飲みに行く事ですビール

と、さすが一流トランペット奏者と思わせる回答をされてました。

ガーシュインの津堅さんは本日最も新鮮に感じた『枯れた音』でベテランの味を聴かせてくれました。
この音が出来ても、未だにN響現役首席奏者であると言うのが凄いですね。

続いて展覧会の絵では、プロムナード(個展に会場を歩くシーン)のトランペットソロ、高橋さんがやはりゾクゾクする演奏を聴かせてくれました。高橋さんは、スタイル的にもドイツ的でも、アメリカ的でも無く、高橋的と言うか、確立された奏法で、安定感と個性を感じされられました。

さて、ここでホールにも少し触れてみます。

アリオス大ホール2階
(今回は二階席・前方真中付近でした。演奏中は写真撮影してませんよ!)

ステージの真後ろに大きなスクリーンがあります。
三鷹芸術文化センターで催された同じ茂木さんの企画では、茂木さんのトークが曲に対する理解をより深く導いてくれますが、
アリオスでは、茂木さんの曲間の解説以外に、演奏中にジャストタイミングで解説がスクリーンに表示されます。
また、ソリストの本番中に彼らの練習風景やプロフィールが写真、テキストとして流れたりします。
前半のナチュラルトランペットの解説の時であれば、自然倍音の楽譜が出てきたり、
展覧会の絵では、その楽章を作曲するに当たって実際にインスピレーションを得た当時の絵が表示されたりします。

ホールの響きも個人的には好きです。
余計な響きで会場を大音量で圧倒する事もありません。
一人一人のサウンドがクリアーに聴こえつつ、でも、ホルンパート等は、一つにまとまって聴こえる感じです。
(変な表現ですが、優秀なオーディオ機器に似てます。デジタル化が進んだ結果、オーディオもホールも、音響設計には同じようなデジタル機械で設計・バランス取りをするから似てくる?)

チューバ、バストロンボーン、ベースが柔らかくまとまりつつも、個人個人の音がクリアーに聴こえました。
(例えば、いわき同様に好きなサントリーホールはもっとまとまった結果としてのサウンドが聴こえてきます。)

奏者も優秀でした。B.Trbは以前、トロンボーンクァルテット クラールで聴いた事がある黒金さんでした。柔らかいサウンドに加え、以前よりも鳴り・響きのスケールが大きくなったと思います。
そしてホールのポテンシャルの高さを感じさせるのに一役かったのは、柔らかく懐の深い演奏をしつつも繊細な演奏を聴かせてくれたチューバの古本大志さんでしょう。
お若い方でした。知らない名前だったのでネット検索したら、日本菅打楽器コンクールで1位取ってる方でした!そりゃ上手い訳です。と言うか、管打で何位なんて言うのが失礼な位、素晴らしい演奏でした。これからのご活躍に期待しています。本気で日本で一番好きなチューバ奏者かもしれない。

今回のオーケストラ、第一線で活躍されているプレイヤーの方が沢山出演していたのですが、弦・管楽器問わず、若い方が堂々たる演奏をされているのが印象的でした。(この辺が三鷹で開催される茂木さんの企画のオケと個性が異なる理由でしょうか?)

話をコンサートに戻します。今回の主役が、花形楽器であった事もあり、アンコールも中身の濃い内容でした。
津堅さん、高橋さんが子弟関係にある事は知ってましたが、このトランペット吹きの子守歌は互いの個性を主張しつつも、同じルールの元演奏がされており、これがまた心地良く聴かせてました。
(私も師匠とこんな風に吹けたら。。。。。)

また、アンコールのサンダーバードでは、演奏に加え、照明、バックスクリーンをフルに使い、新しい時代のコンサート形式を提言してくれました。
この曲ではホルンパートが早いタイミングで立たされた(良い演奏をすると指揮者がその楽器の人たちを立たせる慣習があります)のですが、
アンコールでも一切の手抜きをせずに熱い演奏を聴かせてくれた丸山勉さんを1stにお迎えした事によるものと思います。同氏は以前よりも輪郭がはっきりした気がします。より一層オケ向きな音色になったような。
そしてダークなサウンドは個性的ですが、かなり吹き込んでもうるさい感じがせず、セクションとしてまとまって聴こえる要因だったと思います。
(帰りに駐車場でご満悦な表情で愛車のハイブリッドカーに魚を積んでいたのが最も印象的でした。)

と、長々と書いてしまいましたが、

・ホールが良いデュエット
・プレイヤーが良いバイオリン
・良い企画を立案、実行サイドの人的資源、フットワークが良い男
・運営サイドと地元のお客さんのつながりが深く、マナーも含め方向性が良い友達

そして、

『食べ物が上手い!!魚』(だから丸山さんを始め魚好きの良いプレイヤーが集まる!?)

ここまで来たら、東京よりも良い演奏が聴けるのが当然ですよね。
次に繋がる期待感大のコンサートでした。是非次の企画もお願します。

最後に、ホールの係りの方達の接客マナーの良さにも触れておきたいと思います。
サントリーホール、オペラシティー等と比べても引けを取らない接客マナーでした。
地元に根ざした運営の為、スタンダードなサービスに加え、血の通った接客をしてくれます。
東京では組織化されたとしても出来ない良さだと思います。

近県の皆さん、是非一度足をお運びになってみてはいかがでしょうか?

<リンク>
いわきアリオス (http://iwaki-alios.jp/)
アリオスペーパー (http://iwaki-alios.jp/cd/app/index.cgi?CID=aliospaper)
アリオスブログ (http://www.voluntary.jp/weblog/myblog/456)