日本は児童ポルノの発信基地なのか? | マンガ論争勃発のサイト

日本は児童ポルノの発信基地なのか?

「日本は児童ポルノの発信基地」
 という言説が一人歩きを始めてどれくらいたったろうか?
 未だにこれを定説として扱っている人が結構多い。
 そこで、そういう人々に質問したい。
「データのソースはどこにあるのか?」
「誰がカウントしたのか?」
「『児童ポルノ』をどう定義しているのか?」
 少なくとも私は寡聞にして知らないし、「日本は児童ポルノの発信基地」を枕詞のように使う新聞記事でも、私が目を通した範囲ではその根拠が明示されたことはない。
 どなたかソースを、ご教示いただければ幸いであります。
 いや、少なくとも大手マスコミにはこの種の論説を紙面に掲載する時は「ウラを取る」義務があると思うんだけどね。
 さて、イギリスにInternet Watch Foundation(以下IWF)というインターネット監視団体がある。
 http://www.iwf.org.uk/
 この団体の権威と信頼性に関しては、少なくとも、児童の人権保護団体である国際ECPATがIWFのデータを引用しているというのも一つの指標にはなろう。
 IWFには、こういう報告があがっている。
IWF reveals 10 year statistics on child abuse images online
http://www.iwf.org.uk/media/news.archive-2006.179.htm
 ベースになっているのはIWFが1996年から10年にわたって集めた「児童虐待と認定されるインターネット上の画像」に関するリポートだ。そうした画像の「発信源」であるサーバーの所在地は以下のようになるという。


51% appeared to be hosted in the US
20% appeared to be hosted in Russia
7% appeared to be hosted in Spain
5% appeared to be hosted in Japan
1.6% was hosted in the UK


 この数字を見て、どう思うだろうか?
「日本が発信源なんて嘘っパチだった!」と感じる人もいるだろうが、
「5%も日本から発信されているではないか!」と感じる人もいるだろう。
 冷静になっていただきたいのだが、どちらも間違ってはいない。
 この数字では日本が最悪の児童ポルノ発信国だとは言いにくいが、清廉潔白だとも言いづらい。
 そもそもIWFが「児童虐待画像」をどう定義しているのか? ということを考えないでこのレポートを評価することは難しい。
 ただ、一つ、確実に言えることはアメリカやロシアよりは随分マシだということだ。
 その上で、2008年1月30日付読売新聞朝刊「論点」に寄稿されたシーファー駐日アメリカ大使の『児童ポルノ対策―法改正で米と捜査協力』(http://tokyo.usembassy.gov/j/p/tpj-20080201-72.html )という一文を読むと、児童の人権保護という大義に関しては結構なことだと思う反面、正直な話「いい気なもんだな」とも感じるのだ。
 大使の文章で気になるのは、まず、
「児童ポルノの二大消費国である日米両国は、蔓延(まんえん)防止のため共同で取り組まねばならない」
 という部分。
 さすがに「二大発信国」とは言えないわけだが、「二大消費国」という根拠はどこにあるのだろうか?
「主要8か国(G8)で児童ポルノ所有を非合法化していないのは、日本とロシアだけだ」
 という批判も「日本が『二大消費国』の一方の雄」という前提があってはじめて言えることだろう。
 こうした他国からの根拠不明瞭な批判に対しては、是は是、非は非として対応すべきではないのか。
「アメリカがこう言ってるから、そうしなければ」
 という態度では、与しやすしと舐められるだけでなく、通すべき大義が泣くというものだ。
(永山薫)