セラピーキャット

丁度、一週間前の日曜日のことです。

突然に、一人の男性が我家を訪ねてきました。

『唐突に押しかけて申し訳有りません。

私は○○という者です。

事前に電話等で連絡するべきでしたが、

そこまでお調べするのは、失礼かと思いまして・・・』

ｲﾝﾀｰﾌｫﾝ越しの声は、紳士的で穏やかな印象を受けました。

私もカーチャンも聞き覚えのない名前でした。

何かのセールスか？

と思いましたが、会社名も言わないし雰囲気も少し違います。

『調べる』

というワードが気にかかりましたので、

「表に出ますから、待って下さい。」

と玄関に向かいました。

玄関先には、中肉中背、年齢は６０歳前後くらいでしょうか、

キチンとした身なりの人が立っていました。

『初めまして、○○といいます。』

軽く会釈をしながら、名刺をくれました。

『今日はお願いがあって参りました。』

ここで明かすことは出来ませんが、

テレビでCFを流し、誰もが知っている有名な企業の取締役でした。

（後で、ネット等で独自に調べたところ、本当に本人でした。）

ヘッドハンティング？？？

年収は２０００万円！（゜。゜）

週休は３日！（゜。゜）

社宅として、猫庭の付いた邸宅が付与！（゜。゜）

いやいや、有り得ない。

だいいち、私なんぞにそんな話しが来るはずは・・・

仕事人間になる気も更々有りません。

今のままで充分に幸せ。

しかし、ステップアップも悪くないな・・・（￣∀￣）

『どうすんのよオレ！』

ライフカードのCFの様な妄想が頭の中を駆け巡りました。

全然違う話しでした。

少し考えれば、

ヘッドハンティングにわざわざ取締役が来るはずもありません。

その男性の話し・お願いというのは大吉のことでした。

その人のお母さんは、不治の病で余命いくばくも無い状態。

ある時たまたま、ウチのブログをお母さんが観てくれた。

そこに当然に登場している我家の大吉が、

以前に家で飼っていたニャンコにそっくりだったそうです。

自分の子供達が巣立った後は、

そのニャンコを溺愛していたとのことです。

３０年以上も前に飼っていたニャンコのことなので、

本ニャンは、とっくに亡くなっているのですが、

そのお母さん、少々痴呆も入っているらしく、

PCでプリントアウトした大吉の写真を眺めては、

『チューﾁｬﾝ、よその子になっちゃったんやね～。』

とつぶやいたり・・・

『チューﾁｬﾝ、もう一度帰ってきて・・・』

と涙声に・・・

神様のちょっとしたイタズラ心でしょうか。

お母さんの昔飼っていたニャンコの名前は『中吉』というそうです。

『猫なのにチューですか？』

とは、さすがに突っ込めませんでした。

男性は、高校生の頃に父親を亡くしたそうです。

女手ひとつで、自分を育て大学まで行かせてくれた、

今の自分の地位があるのも母親のおかげです、

とても尊敬しています、ということを話しました。

最後の親孝行をしたい、ということで、

譲ってくれるはずは無いだろう、と思いながらも、

拙ブログの、少ない情報から、我家を探し当てたそうです。

つまりお願いとは、大吉を譲って欲しいと・・・・・

男性は以下の条件を出しました。

大吉には専門の世話係を付ける。

必ず可愛がる。

身体に対する医療的なケアは完全に行う。

最長でも２年を期限として、期限内には返す。

謝礼金として７３０万円を支払う。

７３０万円というのは、一日１万円を２年で計算したらしい。

仮に半年で返されても、７３０万円は全額貰えるとのこと。

要約すると、

セラピードッグならぬ、セラピーキャットを大吉が努める。

譲るわけではなく、レンタル料をもらって２年間移籍をする、ということです。

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男性が帰った後・・・

カーチャンと話し合いました。

大吉は他人に渡したくない。

思い込みかも知れませんが、

私達以外は大吉を幸せには出来ません。

とは言え、グラッとくる要素が幾つか有りました。

人助けになる、ということ。

大吉は確実に可愛がってもらえる、ということ。

最長２年間我慢すれば返してもらえる、ということ。

大企業の取締役とのコネクション。

レンタル料７３０万円。

後半ふたつの理由がとても人間臭くて嫌だ・・・

交通費と日当を貰って、毎日会わせに行く、

という案も考えましたが、

大吉のストレスを考えると出来ません。

皆が幸せになれる方法があれば良いのですが。

考えて、私達はひとつの結論を出しました。

もし、大吉が私達の言葉を理解できたら・・・

大吉は優しい子だから分かってくれるよね。

もし、大吉が私達の言葉を理解できたら・・・

大吉は優しい子だから許してくれるよね。

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帰り際に男性は、申し出に対する私達の回答を、

３月３１日までに欲しい、

いかなる回答でもすんなり受け入れます、

と言いました。

ブログにしているということは、

私達は、男性に対してある回答をしたということです。

ブログにする了解ももらいました。

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『で、トーチャン達は何て返事をしたんニャ？』

何か態度デカクねぇ？

『７３０万円の猫ニャ！』

大吉・・・あのね。

人間はね、動物と違ってウソをつくんだよ。

特に４月１日は、ウソのオンパレードなんだよ。

ちなみに、７３０万が１０００万でも、譲る気は全然ないよ。

残念だったな。≧(´▽｀)≦

『５０００万円だったら、どうニャ？』

・・・それは・・・訊くな。

トーチャンはウソが下手なんだ・・・

ゴメンなさ～い。　人(´□｀;)

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