16日(火)3時起きで4時にホテルを出る。バスに乗って砂漠ツアーに出発だ。3日で合計1050DHも払っている。どんな旅になるんだろうか。ガイド君と二人ぼろぼろの民営バスに乗ってザゴラヘ、大きな荷物(段ボールとか)を抱えた村人たちがどんどん乗車してきて、バスはほどなく満員に。砂漠への基地となるザゴラでグランタクシーに乗り換えてタゴニッツへ。いちいちタバコを吸わずにはいられない彼には辟易した。グランタクシーではフランス語をしゃべるカップルと相乗りになり、不安な気持ちが少しまぎれた。タゴニッツに到着すると歩いてキャンプ場を兼ねる広い農園に連れて行かれた。そこにはツアーを契約したときに来ていたハンサムな人がいた。キャンプでだらりだらりと時間をつぶしているとマラケシュのユースで出会ったNYからとアイルランドからの二人組と遭遇。あまりの偶然にびっくり!きつい日差しの下で一緒にタジンをつついた。彼らもユースのオーストリア人に悩まされたらしい。料理人をしているというNYからの青年が「彼はウェーターだ」と蔑むように言い放ったのがひっかかった。彼はブッシュを嫌い、住みやすい土地を探す旅をしているという。セヴィリャやカサが気に入ったと言っていた。そうやってまだ見ぬ故郷を探す若者って日本にはあんまりいないかもしれない。そういえば彼らは一日250DHづつ払ったと言う。350払った私に「君は特別料金だから他の人と値段の話をしない方がいい」と行ったガイド君への不信が高まる。素直に質問してみると、彼らとはプランが違うらしい。素直に納得。でも150も多く払った挙げ句すぐにはおつりがない、といわれ慌ててジープに乗せられ不信感が再燃した。
 ジープはこぶりながらもさらさらの「砂漠」に到着した。道中ガタガタのとんでもないところを通ってきたんだけど、私たちを乗せてきた日本車は全然こたえてないみたい。そこからすぐラクダに乗せられ二人の付き添いと出発だ。例の美形の方がガイドでもう一方がらくだを引いた。「君はモロッコではファティマ・クスクスだ」なんてベタ冗談にも笑える位すがすがしい気持ちだった。簡単なアラビア語も教えてもらい。2人とすぐに打ち解けた。最初に習ったインシャッラー(神様の御意志次第だよ)っていう言葉がすっかり気に入ってしまった。何にでも明確に意思表示をしなければ行けないヨーロッパとはえらい違いだなあ。らくだ引きが作ってくれた食事をつついて、こぼれ落ちそうな星を見ながら7時には眠りについた。5重の毛布を頭からかぶって。
 17日(水)8時頃ぽんぽん叩かれ目を覚ました。日中は随分暑くなるが、大して歩きもしない内にらくだを休ませるので、まあ我慢できた。ふーふー言いながら砂漠を進み、食事をして、夕方には星の下でくだらないおしゃべりをして、とっとと就寝。別の世界にいたみたい。一時間とぼけ~っとはしていられない私だけど、何故か退屈はしなかった。
 18日(木)朝給水場で体と髪を洗ってすっきりした。ボジューと後ろからフランス人が現れたのにはびっくり。3時頃にはキャンプに戻った。もうらくだは一生分乗ったかも。行きのグランタクシーで出会ったフランス人に再会した。ああ、なんとか生還できた。ちょっと疲れてはいたけど、せっかくハイアトラスを越えて砂漠地方まで来たんだから、と結局ランドローバーでアルジェリア国境近くの大砂漠シェガガに行くことにし、夜は砂漠のキャンプに泊めてもらった。さすがに体を洗いたくなったから、ガイドに頼み込んでタゴニッツのハマムに連れて行ってもらった。夜はキャンプで楽器をいじりながらガイド達と色んな話をした。ビールをじゃんじゃん空けながら。こんなシンプルな人生もあるんだ。