事業継続マネジメントにおける「事業継続」とは? | 京都で働くコンサルタントのブログ

事業継続マネジメントにおける「事業継続」とは?

皆さん、こんにちは。
(株)マネジメント総研の小山です。

今回は事業継続マネジメントにおける「事業継続」に焦点を当ててお話したいと思います。


今から11年前の米国同時多発テロで被災したとある銀行は、ニュージャージー州にある1400人が働くことができる倉庫を利用し、テロ発生後、2時間10分で業務を再開したそうです。


この例は極端かもしれませんが、事業継続を脅かす災害や事故は実は無数にあります。


日本では東日本大震災をはじめ、昔から多くの災害の影響を受けていることから、防災計画や避難訓練などを容易に思い浮かべられるほど、「防災」の概念が定着しています。



では、「防災」と「事業継続」は同じ概念か?


全く異なります。


では、どう違うのか?


違いは色々あるのですが、一番大きな違いは「出発点」です。


「防災」は、「原因(インシデント)の把握」を出発点とし、大規模災害など事業継続を危うくする要因や事象を特定することから始まります。


一方で、「事業継続」は、「結果(インパクト)の把握」を出発点とし、緊急時の組織へのインパクトと復旧の切迫性に注目します。


つまり、「事業継続」とは、今どの事業が、どのくらい中断(混乱)すると、経営に支障を来たすのか、という切り口で、事業の重要性を評価するところから考えていきます。


すなわち、事業の中断(混乱)が起こったときに、どの事業を優先的に継続するのか、という経営判断でもあります。


そして、どの業務がボトルネックとなるのか、どのような経営資源がどれくらい必要なのか、を中断(混乱)の経過時間とともに考えていきます。


その上で、そういう事態が発生するリスクを評価し、事業を継続するために事前に投資すべきものと、インシデント発生後の行動計画を検討していきます。



先の米国同時多発テロで被災したとある銀行は、これを事前に行い、日常的に訓練していたおかけで、テロ発生後、2時間10分で業務を再開できたそうです。


この銀行の業務が継続されたことで、助かった関係者も多くあったと思われます。


すなわち、「事業継続」の実現は、何も自社の存続だけを意味するわけではないのです。



今や自社だけで製造やサービス提供を行うことはほとんどなく、仕入先や委託先、協力企業など、多くの関係者との取引の中で、事業は営まれています。


ほとんどの事業は、サプライチェーンの一部を担っていると言っても過言ではありません。


タイの洪水しかり、東日本大震災しかりで、一つでも部品が調達できないと製品を完成させることはできませんし、配送業者が機能不全に陥ると納入することもできなくなります。


この点から、自社の事業継続を真摯に捉え対応していくことは、サプライチェーンを止めない社会的責務を自覚している表れである、とも言えます。


その結果として、顧客を含む多くの関係者から信頼を得ることにもつながっていくことが期待できます。


このことからもわかるように、「事業継続」は“対策”ではなく“戦略”である、と言えます。



事業継続マネジメントシステムの英国規格であるBS25999-2に、「事業継続戦略の決定」という要求事項があるのも納得できるところです。



ということで、今回は、事業継続マネジメントにおける「事業継続」とは? についてお話させていただきました。