【映画】東京家族 | 杉原学の哲学ブログ「独唱しながら読書しろ!」
久しぶりに、人間を描いた映画を観た気がする。

そして、また、妻夫木聡にやられてしまった。
彼には『悪人』のときにもやられている。

『悪人』が、現代の「人間の不在」を描いた作品だとすれば、
『東京家族』は、現代の「人間の存在」を描いた作品だろう。

山田洋次監督だけに、
観客には年配の方が多かったが、
ぜひ若い人にこそ観てほしい。

妻夫木聡演じる若者が、
被災地にボランティアに行ったり、
家族にオンボロ扱いされている
古いフィアットを気に入って乗っていたり、
伝統芸能の裏方に携わっているのは、
いまの若者の価値観を象徴しているように見える。

彼が持っているやさしさ、
古いもの、伝統的なものに魅力を感じる感性。
そこに山田監督は期待しているし、
応援しているんだということが
この映画から伝わってくる。

ところで以前にも書いたが、
この映画の後半に出てくる大崎上島は、
僕の父方の田舎でもある。

そして実は先月、
おばあちゃんの葬式に出席するため、
僕は大崎上島に帰っていたのだった。

この『東京家族』という映画を知ったのも、
大崎に向かうフェリー乗り場で
パンフレットを見つけたからである。
そのせいか、とても他人の話には思えなかった。

そして、家族の中での僕のポジションは、
みんなに「役立たず」扱いされている
この映画での妻夫木聡のポジションそのものだ(笑)。

それはさておき、
観た後に何かあたたかいものが
確かに心の奥に残る映画である。