職場の後輩(A)が失踪した。ご両親に連絡しても行き先がわからない。突然無断で職場を休み、連絡が取れず、家に行ってみたけど誰もいなくて…一週間くらいしてご両親から連絡が入り、
『昨日の夜中に実家に帰ってきて、無事でいるけれど、心を病んでしまったため、もうそちらで働くことができないと言ってます。そちらへ伺ってお話をさせたいけれど、一人では無理のようなので、私たちが付き添いたいのです』
えーーーーーーーーーーっ!!!!!!!
結局、母親が付き添って次の日に職場に来て、辞めてしまった。
Aは新入社員の教育係でした。そして、新入社員はボーナス前に研修の卒業試験があるんですが、どうやら全員落ちたそうです。私が教育係の時に落ちた人が一人もいなかったので、相当責任を感じたようで、それをきっかけに病んでいったようです。フォロー役の後輩達も、Aがあんまり一生懸命やってるので安心しており、まったく教育にタッチしなかったそうです。Aが周りに相談する事もありませんでした。
緊急事態に上司が新入社員達を呼び出して、教育係を選べたら誰に教えてもらいたいかと聞いたところ全員が私を指名しました。そこで教育のしなおしを行ったのですが、基礎すら曖昧だったため寝る時間を削って簡易マニュアルを作り、毎日勤務前に研修の模擬テスト(私が作ったやつ)をさせました。一ヶ月後に再試験の為、何としても一ヶ月で全員受からないと、後の昇給や出世に係わる一大事だったのです。自分のひきつぎが十分でなかったのかもしれない、Aが失踪してしまったのは自分のせいかもしれない、そう思いながら必死でした。新入社員の将来がかかってる。いい加減な事はできない。これは自分の責任だ。
この地獄のような一ヶ月の間に、お兄さんにかまう暇もどんどんなくなり、ストレスから八つ当たりしてしまうこともありました。でも、お兄さんは文句も言わずにいつも笑顔でいてくれました。
再試験が行われ無事に全員受かったので、残業することなく家に帰るとお兄さんがご飯を作って待っていました。『お疲れ様。まにゃちゃんの好きな物たくさん作ったよ。一緒に食べよう!』っと言われ、なぜか涙が出てきてしまいました。『まにゃちゃんがすごく頑張ってたの僕は知ってる。よく頑張ったね。弱音もあんまり吐かないし、本当はすごく心配だったよ。これから先何があっても僕が君を支えていくからね』
こんなに誰かに大切にされた事はなかったです。そして、私にとってもお兄さんはとても大切な人だとわかりました。