昨日は参議院の内閣委員会で「成年後見制度利用促進法案」が審議・可決されました。
私もリアルタイムでインターネット中継を見ていました。
この法案に反対する共産党議員、山本太郎議員による質問が行われました。
反対する議員の主張は、ざっくり要約すると、「そもそも現在の成年後見制度には問題があるのに、そこを見直さずに利用を促進するのはおかしい」ということかと思います。
特に一番の問題は、現在の成年後見制度は後見人が本人に代わって意思決定を行うこと(代行決定)が可能な制度であるという点です。
このように後見人に大きな権限が与えられているにもかかわらず、後見人に対する監督体制・サポート体制が不十分であるため、本人の意思を尊重した後見業務が行われるかどうかは後見人個人の資質に大きく左右されてしまうことになります。
たとえ99人の後見人が本人の意思を尊重した後見業務を真摯に行っていたとしても、1人の不埒な後見人が本人の意思を無視して後見業務を行おうとすれば行えてしまうのであれば、その後見人に「運悪く」あたってしまった人はたまったものではありません。
この法案は可決されましたが、反対意見を考慮して附帯決議がなされています。
成年後見制度利用促進法附帯決議
「政府は本法の施行にあたり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。
1 障害者の権利に関する条約第12条の趣旨に鑑み、成年被後見人等の自己決定権が最大限尊重されるよう現状の問題点の把握に努め、それに基づき必要な社会環境の整備等につき検討を行うこと。
2 成年後見人等の事務の監督体制を強化し、成年後見人等による不正行為の防止をより実効的に行うため、家庭裁判所、関係行政機関及び地方公共団体における必要な人的体制の整備その他の必要な措置を十分に講ずること。」
反対意見では「制度自体の見直し」を求めているにもかかわらず、附帯決議では「社会環境の整備等につき検討」とずれた表現になってしまっていますが、それでも反対意見の爪痕が法律に残ったのではないでしょうか。
本法案は、今後参議院の本会議で審議され、可決される見込みです。
(東京ジェイ法律事務所 司法書士 野村真美)
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