女性は年齢を重ねると妊娠しづらくなります。
大きな要因は卵子の質の低下にあります。これは、止めようがありません。
また、卵巣に残されている卵胞の数も少なくなります。残念ながら、これも止めようがありません。
年齢を問わず、排卵される卵子の染色体異常率は25%程度あるそうです。
月経周期にすれば4周期に1回は染色体異常を持った卵子が排卵されるということになります。この染色体異常率が、35歳を過ぎた頃から高くなり、40歳を過ぎるとさらに高くなります。
では、染色体に異常のなかった卵子は、受精後、順調に成長するか? というと、そうではありません。
また、卵子に染色体異常がなくても、精子と出会い受精した後、細胞が分割していく中でエラーが起こって染色体異常を起こすこともあります。
受精卵の染色体異常率は40%、着床前の受精卵の染色体異常率は25%に起こるとされています。この率も、年齢が高くなると高くなっていくものと考えられます。
染色体異常を起こした受精卵の多くは、成長を止めて着床することはないでしょう。でも、染色体異常を起こした受精卵のすべてが成長を止めてしまうわけではありません。そのため、生化学的妊娠(化学流産)になることがあります。
生化学的妊娠は、妊娠反応が陽性になった先、妊娠成立(臨床妊娠:胎嚢確認、胎児心拍を確認)に至らずに月経が訪れます。
また、流産にならず染色体異常を持って生まれてくる子どももいます。
それから、卵子自体のいわゆる「元気」も若い頃と比べれば、低下するということもあるでしょう。
受精卵の成長は、精子の質にも関係してきます。
精子は、DNA修復酵素を持っていません。つまりDNAの傷を治す力を精子は持っていないとうことです。
精子のDNA修復酵素は第二減数分裂を起こす過程で、またそれ以降で失うといわれていて、射精精液中、また人工授精や体外受精であれば調整した精子の中にもDNA損傷精子が含まれている可能性があります。
精子のDNAの傷は、卵子と受精した際に、卵子が修復をします。ですが、精子のDNAの傷が多ければ、卵子は疲弊してしまうでしょう。
元気な卵子ならいいのですが、そうでなければ精子のDNAの傷を治すために力を使い、その後、成長するための力が足りなくなってしまうこともあるかもしれません。
受精卵は8分割までは卵子の力。それ以降は胚の力で成長していくともいわれています。卵子に力があるということは重要なことなのです。
(このお話は、i-wish ママになりたい/男性不妊特集号で紹介しましたが…。ごめんなさい。重版予定がありません。)
年齢を重ねてくると、こうしたことが起こりやすくなり、妊娠が難しく、そして流産が起こりやすくなるわけです。
また年齢を重ねれば、誰しも自己抗体を作りやすくなっていきます。
初期流産の多くは胎児の染色体異常が原因で全妊娠の15%程度に起こります。その多くは卵子に質に由来するといわれますが、自己抗体が要因である場合もないとはいえません。ですから、特に40歳を過ぎている方で体外受精をする場合には、不育症の検査を視野に入れてもいいかもしれません。
(この詳しいお話は i-wish ママになりたい 不妊症と不育症 でご紹介しています。)
40歳からの不妊治療は、とても厳しいです。
とくに43歳くらいから、さらに厳しくなるようです。
(このお話はi-wishママになりたい 40歳からの不妊治療の中で、おち夢クリニック名古屋の取材記事にあります。)
そして、1年、1年が、とても貴重です。
では、「『40歳になったら、妊娠は諦めなさい!』ということ?」というと、決してそうではありません。
卵巣に残されている卵胞が少なくなっても、染色体異常率が高くなっても、妊娠し、出産に結びつく卵子がゼロということではないでしょう。
ですから、40歳を過ぎても、さらに厳しくなる43歳を過ぎても妊娠例も出産例もあるのです。
ただ、現実が厳しいことには変わりありません。
厳しい現実を客観的に知っていてほしい。
そして、質のいい卵子に巡り合う周期を逃さないようにしてほしい。
ご夫婦がベストと考える方法が選択ができるように、私たちは情報提供ができればいいなと思っています。
選択する方法は、ご夫婦ごとそれぞれです。
何が正解とはいえません。そして、なにも間違いではないでしょう。
ただ、
「あの時、やっぱり不妊治療をしておけばよかった」
「タイミング療法にこだわってないで、人工授精に早めに切り替えればよかった」
「もっと早く体外受精をすればよかった」
そうした悔いだけは残してほしくないのです。
子どもをほしいと思う気持ちに、年齢は関係ありません。
ですが、タイムリミットが迫ってくるのも確かです。
若いうちに妊娠すればよかったじゃん! などということでもなく、今ある状況で、今の状態で、よりよい選択をして妊娠へチャレンジしてほしいと切に願っています。
そして、赤ちゃんをその手に抱けることを切に切に願って、1冊1冊特集を組んで i-wish ママになりたい をつくっています。
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