ひそかに発足、純喫茶部。
今回は、新橋「カトレア」へ行ってまいりました。
JR新橋駅前SL広場にそびえ立つのは、
はじめてあしを踏み入れる、「ニュー新橋ビル」。
(同ビルには、「カトレア」の他、フジ、ニューカナル、ポワ等やはり心躍る喫茶店が軒を連ねています)
サインこそ今風に設えてありましたが、館内は、闇市時代の混沌が息づいています。
長蛇の列の先にはド派手なチケット屋、みたこともないような薬が山積みの謎の薬局らしき店舗、おっさんの革靴ばかりが鈴なりの靴屋、完全に現地感丸出しの按摩店の軒先には、太腿露わなむちむちのお嬢さん方……もはや自分の知っている日本ではない雰囲気に圧倒されてしまいました。
・・・
最高か。
折しも、駅前では、新橋古本市(5月21日まで)が開催中で。
足止め、食らいましたよね。
喫茶店をハシゴするつもりでおりましたが、古本市の魅力には抗えるわけもなく。当たり前のように、本の海を泳ぎ、やむなく、本命を「カトレア」に絞り込んだ次第でございまして。
ニュー新橋ビル/三階。
本ビル創業当初よりこの場所で営まれているという、純喫茶です。
ガラス張りの向こうにはスーツ姿のおじさま方と、煙のカーテン。
もくもくと立ち上る、からくて苦い煙は、大人の印。白色を基調としたモダンな設えが、たまらなくノスタルジックです。
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ひとしきり歩いたあとですし、
ここでも、やっぱり、バナナジュース。
蝶タイのウェイターさんが、きびきびとご給仕してくださいました。
ころんと丸いグラスに、なみなみと。
バナナの香りもくっきりしていて、ひたすらまろやかな味。
茶卓のようなコースターも、そそります。
ブレンド珈琲は、酸味の冴えた軽やかな味。
お店の名物、サンドイッチにも良く合いそうです。
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バナナジュースのお供には、
古本市で手に入れた
横溝正史単行本未収録作品て!
寺山修司追悼特集て!
よう見つけたな、と、にやにやがとまりませんでした。
しかもこのすこぶる状態の良い「幻影城」。毎度おなじみ花輪和一先生の挿絵付。300円ぽっきり、というのは、もう破格ではないでしょうか。
本当に良い買い物をいたしました。
暮れゆく空に、
薄明りの喫茶店。
オールバックに、白髪、眼鏡。手前も奥もサラリーマン。ワイシャツ、ネクタイ、革靴。右見ても左見てもサラリーマン。サラリーマン、サラリーマン、サラリーマン。こんなにも賑わっている店内なのに、ドヤ顔でMacを開いているような人間がひとりもいないのが、本当に素晴らしいなと思いました。
新橋は、サラリーマンの聖地と呼ぶにふさわしく。すれ違う人たちの殆どが、かっちりと、スーツに身を包んでいる不思議なまち。
一頃の「近代感」が存分に詰まったラウンジ「カトレア」は、精悍、というにはいささかほころびすぎた、溌剌、というにはすこしばかりくたびれた……哀愁に満ちたおじさま方の、憩いの場として活気付いておりました。店内におかれた漆黒のグランドピアノの傍には、よく見ると、二台の扇風機が背中合わせて鎮座。ピアノはおよそ風を送るための足場として、あたらしい役目を得ているようではございましたが……いつかまた、あの鍵盤が小気味良いナンバーを奏でる日が訪れるものと願い。
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初回2016年だったんだ! と、時の流れに驚嘆しつつ。2018年春。
いつぞやの再訪の折の、コーヒーゼリーを。
端正な姿が、モダンな空間と見事に調和しています。
つるんとしたゼリーはふくよかな珈琲のお味。シロップで甘さを調整できるのもうれしいですね。
周囲は殆どサラリーマン風の男性で、やはりお待ち合わせやご商談の場にもつかっていらっしゃるようでした。わたしは自前の原稿を手に、こりこり校正作業など。喫茶店のしずかにさざめく空間では、やけにあたまが冴える気がいたします。
ニュー新橋ビルの全貌はしかし、いまだまったく把握できていません。
●カトレア
東京都港区新橋2-16-1 ニュー新橋ビル3階
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【今後の予定】
●5月23日(月) 第八回マルカフェ美術部「御嶽神社で写生をしよう」
●5月25日(水) 星恵美子「マルカフェおしゃべり講座/官能小説業界のウラ話」
※お昼の営業時間はご予約のお客様で「満席」となりました。ありがとうございます。
●6月27日(月) 第九回マルカフェ美術部×宵町めめ先生コラボ企画
●7月2日(土) 終日貸切
●7月9日(土) 終日貸切
金土日の週末カフェ(営業時間 11:00-17:00)
Malu Cafe/マルカフェ
〒145-0073 大田区北嶺町37-2
TEL/FAX:03-6425-8951
MAIL:chef@malucafe.com
東急池上線「御嶽山駅」より徒歩2分/「多摩川駅」より徒歩17分