タイトルは上のようにしたが、私には読めない。

読める人はすごいと思う。

谷崎潤一郎「人面疽」という短編の中に出てきたので、気になった文字。

引用すると

 恋人の死体を前にして、彼女は暫らく失心したように、惘然と彳立して居る。

であるが、これを読める人は、そんなにはいないのではあるまいか。

私が読んだのは文庫本 (岩波文庫『東京百年物語2』2018)に収録されているものだったので、フリガナが付してあった。

彳立」 は [テキリツ] と読む。

漢字オンライン [漢字「彳」について] を見ると、音読みが [テキ] で訓読みが [たたず(む)] だとある。

「たたずむ」は今は普通は「佇む」と記すだろうから、「彳」なんて文字で表記されてるのを見ることは、めったになかろう。


ついでに記しておくと、引用文にある「惘然と」は [ばうぜんと] すなわち [ぼうぜんと] と読む。これも今日では「呆然と」と記すのが普通だろう。