牧野富太郎の「ウキクサ・マコモ」という文章の中に

 草木は時を問わず処を選ばずいつでもどこでもあるものなれば随時これを楽しむことができるので娯楽の対象物としてこんな佯りものがまたとあろうか、 ・・・

という一節がある。

牧野富太郎の植物への愛に発する理想主義的な文言が続く箇所なのだが、ここでは上記の文だけにとどめる。

出典は河出文庫 (2022) の牧野富太郎『わが植物愛の記』である (やけに読点が少ない)。

私の注目したのは「佯りもの (つくりもの)」という表現。

」という漢字に、なじみがないので調べてみると

 いつわる。だます。みせかける。

という意味を持っていると分かった (→ 漢字ペディア [])。

「娯楽の対象物」としてとしての「佯りもの」など、植物に匹敵しない、ということを述べているのである。

何と植物愛に満ちた人であろうか。