こういう漢字が ・・・ いや、文脈から類推できなくもないのだが、見慣れないので、一瞬考えてしまう。

こんな文章の中に出てきた:

 人皇五十九代宇多天皇の御字、それは今から1061年の昔、寛平四年 (892年) に僧昌住の作ったわが国開闢[かいびゃく]以来最初の辞書「新選字鏡」に、アケビのことを(*)と書き、・・・

 * クサカンムリに開という字なのだが、変換できない。現代においては漢字で「木通」とか「草通」と表すそうである。

引用文の出典は、牧野富太郎「アケビの実」という文章(河出文庫『わが植物愛の記』[2022] 所収)。

「人皇」という文字を見て「人間天皇」というのを連想してしまったが、そもそも「人皇」という表現はあるのか?

コトバンク [人皇] に

 神武天皇以後の天皇をいう。

とあるから、そういう表現があるのは確かなようだ。

神代の神々と区別しているのだとのこと (同 デジタル大辞泉)。そして、[にんのう] という読みもあるという (同 精選版日本国語大辞典)。


それはなるほどと思ったものの、もひとつ「宇多天皇の御字」という部分の「御字」も気になった。

まさか「御の字」の意味ではあるまい。

が、「御字」はネットの検索にかからなかった。

敬意を表しての表現だとは思うのだが、ひょっとして ・・・ 「御時 [おんとき]」の「時」を [ジ] と読んで「字」という文字に誤植してしまった結果ではあるまいか ・・・ などと妄想してみたり ・・・

でも、誤植であれば、現代の文庫本に収録するにあたって修正されるはずだし ・・・

だから、結局疑問のままである。