「出立」 と書いて 「いでたち」 と読む ・・・

・・・ とばかり思っていた (でなければ 「しゅったつ」 か)。

ところが、松井今朝子 『江戸の夢びらき』 の中の團十郎の葬儀の有様を描いた部分の

 かくして出立の酒や飯も半端なことでは済まなかったが

という文の 「出立」 には [でたち] と振ってあった。

「い」 が抜けているというより、「出立」 を素直に読めば [でたち] には違いない。

weblio辞書 - 世界宗教用語大事典 [出立ち] (でたち) の項に

 旅行や社寺詣でのため遠出するとき、縁者などを招いて飲食すること。婚礼や葬式にも、この風習がある。出立ち飯。

とあるではないか。

なるほど、團十郎の葬儀の日に、身内の者や弟子や芝居関係者が多数参列したために、大変な人数に膨れ上がってしまい、彼らに供する酒や飯も半端な量では足りなかったのだ。


上記引用箇所は、さらに

 鳥目百匹と記された香奠の数が

と続く。

「鳥目 (ちょうもく)」 は 「銭 (ぜに) の異称」 (→ goo辞書 [鳥目]) だし、「香奠」 は今は 「香典」 と書いてあるのを見る方が多いかもしれない。

「匹」 は 「銭を数える単位」 で、古くは10文、のちに25文が1匹となった (→ weblio辞書 - デジタル大辞泉 [])。


時代小説は、日本語の教科書みたいだな。