今では 「たれこみ」 といえば 「密告 (すること)」 を意味するが、かつては別な意味を持っていたことを知った。

神舘和典・西川清史 『うんちの行方』 (新潮新書、2021) を見ていたら、江戸時代における屎尿には、

 勤番・町肥・辻肥・たれこみ・下等品

というランクがあったとある (勤番が最上で、以下は価値が下がってくる)。

「たれこみ」 というのがあるが、これは固形物が少なくて尿が多い屎尿のこと (「質がよくない」 とされた)。

当時の農家は肥料として都市部で出る屎尿を農作物や金銭を渡して入手していた。

肥料とするには、やはり固形物の割合が多く、栄養分が豊富である方が歓迎されたようだ。

考えてみると、「たれこみ」 は 「垂れ込み」 だろう (「糞を垂れる」 わけだから)。

それが 「密告」 を意味するようになった。上品な言い方とは言えないのも無理はないか。


* 何十年か前に、屎尿を運ぶ船を題材にした小説を読んだことを覚えている。藤田雅矢 『糞袋』 (第7回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作) だったかもしれない。