こんな言葉は見たことも聞いたこともない。

いや、「公道」 というのは見もし、聞きもするのだが、それとは違う意味なのだ。

松井今朝子 『江戸の夢びらき』 (文藝春秋、2020) 「京の水 江戸の風」 に

 着るもんが公道でしてなあ・・・ つまり生地や仕立ては立派でも、見かけが地味なもんを好まれます。

という一節があった。

左次兵衛という、江戸の團十郎を京に招くのに動いたプロモーターのような男が、京の坂田藤十郎について語っている部分。

この 「公道」 は [コウドウ] と読むのではない。読み方は [コウトウ] なのだが、松井今朝子のその小説では [コウト] と振ってある。

話者が京の人間だからだろう、と思ったが、コトバンク [公道] の語義を見ると

 地味であること。また、そのさま。堅実。実直。倹約。こうと

とあって、末尾に [こうと] とあるから、そう読んでもいいのだろう。

あぁ、こんなに知らない日本語がある!



((追記)) 「公道こうまつ」 という言い方もあるようだ (→ コトバンク [公道こうまつ])。