こんな文を見た。

 冀東地域へ入りこんでいる日本人に碌な奴はいない。淫売、破落戸、事件屋 --- そんな連中が兵隊の威力をかりて威張り散らし、悪辣極まることをして在着民を絞り虐待しているんだ。

出典は川合貞吉『ある革命家の回想』で、尾崎秀実(おざき・ほつみ)の語ったことばを紹介した中にあった。

時あたかも盧溝橋事件 (1937, S12, 7/7) が勃発した直後である。

尾崎秀実はもちろん、世紀のスパイとされるゾルゲにつながっていた人物であり、後 (1944, S19) に死刑になった。

「冀東地域」 というのは、中国の河北省にあった自治政権 (冀東防共自治政府) の支配地域のことで、「冀東」 は [キトウ] と読む。

「破落戸」 は私にはフリガナが付いていないと読めない。これを [ごろつき] と読むのだそうだ ([ならずもの] と読ませる場合もある)。

昔の中国の 『水滸伝』 のような古典に出てくるそうだ。

今の中国では使われないかもしれないが、漢字の表記として日本語の中に残っているのだという (「日本語、どうでしょう?」 第237回 [破落戸] による)。

そんな昔の表現を現代の日本人が使っていることを知ったら、中国人も驚くかも。