今日は 憲法記念日 で、当地はまことに良い天気だった。

しかし、憲法記念日とお天気に関係があるわけではない。

阿辻哲次 『漢字再入門』 (中公新書) を拾い読みしてたら、面白いことが書かれていた。

かつて 「当用漢字表」 (1946年) というものがあったが、後に (1981年) 「常用漢字表」 として生まれ変わった。

その 「常用漢字表」 には 「朕」 という漢字が入っている。

普通使わないような文字がなぜ 「常用」 なのか。

これは 「日本国憲法」 と関係があるそうなのである。

「日本国憲法」 には、おなじみの前文のその前に 「上諭(じょうゆ)」 というものがついているという。

それは (多分) 知らなかった。

この 「上諭」 というのは、憲法の公布を許可する天皇陛下のお言葉である。

それは 「朕は、日本国民の総意に基いて、云々」 という言葉で始まる。

つまり、ここに 「朕」 という言葉が用いられている。

公文書は 「常用漢字表」 に記載されている漢字を用いるのが基本だから、憲法にかかわる文書に載っている漢字を無視するわけにはいかない。

順序が逆のような気もするが、現在の 「日本国憲法」 の公布が1946年11月3日のことで (施行は翌年の5月3日)、内閣が 「当用漢字表」 を告示したのは同年の11月16日のこと。

わずかの日数の差ではあるが、「日本国憲法」 の公布の方が早かったのである。

また、「璽」 という文字も使う機会はなさそうだが、「常用漢字表」 にある。

この文字も 「上諭」 にある。すなわち 「御名御璽」 の 「璽」 に他ならない。

さらに、その 「上諭」 の末尾には署名者の名前が連なるが、その中にたとえば 「国務大臣 男爵 幣原喜重郎」 などとある。

戦後は廃止された爵位であるが、国の最高の公文書に記載があるのだから、「爵」 という文字も外すことは出来なかったのだ。


「へぇ~、そうなのかぁ」 と感心してしまった。



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