富山県在住のフリーアナウンサー 牧内直哉 です
社会人落語家・安野家仁楽斎 、劇団ばら団員(俳優?)としても活動中!
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映画『侍タイムスリッパー』
『侍タイムスリッパー』
(上映中~:TOHOシネマズファボーレ富山)
公式サイト:https://www.samutai.net/
幕末。会津藩士の高坂新左衛門は藩命により、
仲間とともに長州藩士・山形彦九郎を討つため京都にいました。
いざ、彦九郎と刃を交えた瞬間、落雷によって気を失ってしまい、
新左衛門が一人きりで目を覚ますと、
そこは現代の京都の時代劇撮影所でした・・・という導入部です。
この映画の存在は公開数日前まで知りませんでした。
TOHOシネマズファボーレ富山のHPをチェックしていたら、
ん?知らないタイトルの映画があるぞ・・・と目に留まり、
ネットで予告編を観てみたら、これは面白そうではないか!と。
TOHOシネマズは本編前の予告編上映に偏りがありまして、
少なくとも私は本作の予告編を劇場で観ることはありませんでした。
ひと言でいうと、面白かったです。
去年8月17日に池袋シネマ・ロサの一館のみで封切られ、
その後、口コミで話題が広まったことからギャガが共同配給につき、
ついに全国100館以上で順次拡大公開されるヒット作になりました。
『カメラを止めるな!』と同じパターンですね。
低予算のいわゆる自主製作映画でも面白いものは面白いのです。
安田淳一監督(他、一人で何役も・・・)作品は初鑑賞でした。
ただ、自主製作映画といっても。主演は山口馬木也さんですし、
他にも紅萬子さん(ラジオではたいへん言いづらいお名前です)や、
名前はすぐに出てこないけど、よく観るよね的な俳優さんも結構いました。
存じ上げなかった女優さんは、撮影所の助監督・優子役の沙倉ゆうのさん。
雰囲気がちょっと国仲涼子さんに似てる・・・かな?でもないかな?
また、殺陣師・関本役の峰蘭太郎さんは本物の殺陣の師匠です。
(以下、“適度”にネタバレしています。ご了承ください)
オープニングの京都の夜の長州藩の屋敷前でのシーン。
会話がアフレコだとはっきり分かりまして、そこは低予算です。
しかも、あんなに大きな声で仲間と話したらアカンやろ。
と、ツッコミたくなったのはその最初のシーンと、
終盤の大事な決断(さすがに書きませんよ)の是非ぐらいです。
でも、終盤の件に関しては、優子さんが𠮟ってくれたからヨシとしよう。
脚本でとても良いと思ったというか、私が好きだったところは、
『大いなる不在』でも書きましたが、台詞が説明っぽくないところ。
「未来の世界に来てしまった~!」みたいなことは一言も言ってません。
でも、高坂新左衛門が「何かおかしいぞ」と違和感を覚え、
目にしたもの、人との会話で現状の事実を知っていくんですね。
ポスターの横書きの文字や英数字に戸惑わないのも、
演出の遂行不足かもしれませんが、新左衛門の対応力とも取れます。
というのも、新左衛門はなかなかに頭が良いと思うんですよ。
初めてケーキを食べて、その美味さに感激しただけでなく、
今は誰もがこれを食べられる平和な世であることに尊さを感じています。
そして、これも台詞では言ってませんが、簡単に元の時代には戻れないだろう、
であるならば、この時代の中で自分はどう生きていこうか、
すでにこの時代の中で世話になった人のために何か役に立てないだろうか、
と考えたわけです。この辺りは「武士らしい」ともいえます。
で、彼は撮影所で「斬られ役」になろうと考えたのでした。
本当は侍は「斬られる稽古」はしてこなかったはずですけどね。
しかし、ひょんなことから初めての体験となった斬られ役のシーンは、
新左衛門の俳優としてのポテンシャルの高さも感じさせるものでした。
これが彼を「斬られ役」へと向かわせることになります。
武士の矜持は持ち続けているけど、無駄なプライドがないところも、
新左衛門のキャラクターの魅力ではないでしょうか。
本作は脚本から映画化がなかなか進まなかったのですが、
「脚本がオモロいから、なんとかしてやりたい」
と救いの手を差し伸べたのは他ならぬ東映京都撮影所でした。
昔に比べて時代劇はすっかり少なくなりました。
そんな現状なのに、新左衛門は時代劇で頑張ろうとしたわけです。
その現実への歯がゆさ、悔しさ、時代劇愛に溢れた脚本ですから、
東映京都撮影所が一肌脱ぐ気持ちはよく分かります。
さて、新左衛門は真面目な男ですから、関本師匠の教えを真摯に聞き、
めきめき腕を上げ、撮影所の仲間にも可愛がられ、出演依頼が増えます。
そんな中、かつての時代劇スターで、今は現代劇スターの風見恭一郎から、
久々に主演する時代劇映画の主要な敵役として指名を受けました。
分不相応と最初は断ろうとする新左衛門でしたが・・・。
この役を受けることになった理由が・・・、いやぁ、この脚本は上手い。
言われてみれば、そういうこともあるかもしれませんが、これは上手い!
で、その直後のシーンも私は好きなのですが、
撮影所の所長が新左衛門本人に言うのではなく、
ひとりの場所で、彼の頑張りを見てくれている人がいたと喜んで涙するんです。
ここは数少ない「説明臭い」台詞ですが、私もちょっとウルっときました。
所長さん役は井上肇さん。この方はよく観る名バイプレーヤーさんですね。
脚本はギャグもあるし、テーマ的にも面白い。
ギャグの中に古典落語的なものがありまして、客席もウケてました。
登場人物それぞれに時代劇に対する想いや愛があり、
風見が時代劇から離れた理由も納得がいくものでした。
当然、殺陣のシーンにも見どころが・・・などというレベルではなく、
終盤の決闘は息をのむ緊張感もあって、メリハリの利いた面白さでした。
映画『ヒットマン』
『ヒットマン』
(上映中~:J-MAXシアターとやま)
公式サイト:https://hit-man-movie.jp/
ニューオーリンズで2匹の猫と静かに暮らすゲイリー・ジョンソンは、
大学で心理学と哲学を教える一方、
副業として地元警察に技術スタッフとして協力していました。
ある日、おとり捜査で殺し屋役となるはずの警官が職務停止となり、
ゲイリーが急きょ代わりを務めると、思いがけずその才能を発揮して、
その後も偽の殺し屋を演じて警察の捜査に協力を続けます。
そして、マディソンという女性が夫の殺害を依頼してくたのですが・・・。
アメリカはこういうおとり捜査が認められているのですね。
殺してやりたいと思うだけなら無実ですが、
「○○を殺して欲しい」と誰かに頼むと罪になる。そこを突いています。
半ば犯罪誘導みたいですが、ゲイリーはそこは気を付けていたようです。
ただ、依頼者に合わせて風貌を変えていたりして、
その是非が裁判で問われていましたが、映画として七変化は見どころです。
実はゲイリーにはモデルとなった実在の人物がいまして、
作品は実話とフィクションが入り混じっています。
ゲイリーをプロデュースも兼ねたグレン・パウエルが演じています。
『恋するプリテンダー』『ツイスターズ』など、最近よく観ます。
『ツイスターズ』は吹き替え版だったので彼自身の演技ではないですが、
3作品ともキャラクターが違っていて面白いです。
マディソン役はアドリア・アルホナというプエルトリコ出身の女優さん。
なかなか綺麗な人でして、それまでの依頼者とは明らかに違う。
そして、それがゲイリーの理性を狂わせてしまいました。
(以下、“適度”にネタバレしています。ご了承ください)
ある意味、落語チックなところがあります。
綺麗な女性を相手にすると理性が狂うのは男の性(さが)です。
そして、マディソンの殺害依頼を食い止めたゲイリーは、
その後、彼女と恋人関係になってしまい、
しかし、マディソンが夫と離婚していなかったことでトラブルに。
挙句、今度はその夫がマディソンの殺害をゲイリーに依頼してきて・・・。
ゲイリーはその時に夫を逮捕させてしまえば良かったんですよ。
でも、基本的に“ヘタレ”だし、不倫の後ろめたさもあったのか、
ゲイリーは夫が逃げやすいような流れを作ってしまいました。
その上で、マディソンに危険な状態だと告げたら・・・。
これ、私でも予想が付きました。そうなるよねぇ。
ここには書きませんが、その事実を知ったゲイリーは、
もう冷静な対応ができなくなっていて、事態はドツボへと・・・。
ぶっちゃけ、さすがにこれも書きませんが、まさかの結末でした。
私個人の良心での印象としては、これは「めでたし」ではないです。
途中、ゲイリーはこうなることを肯定するような講義を大学でしますが、
いやぁ、それはちょっと自分に都合がいいんじゃないかと感じました。
ただ、実話とフィクションでいうなら、これはフィクションです。
それならなおのこと、その終わり方はどうなの?と思うわけです。
「まぁ怖いですねぇ・・・」が狙いなら“あり”ではあるんですがね。