「ケンカの話の時間だ、オラァ!」
「どうしたの、血相変え……変え、てない……んん? と、とにかく何があったの?」
「聞いてよ! せっかくの日曜日がまるまる潰れたの!
多分、いや、恐らく、いや、大体マイク○ソフ○のせいで!」
「全部曖昧じゃないの」
「細かいことはいいの! とにかく日曜日が!」
「分かった分かった。だから何があったのよ」
「朝にね、わたし達の創造主が、新しいPCをネットに繋ごうとしたの。そうしたら、なぜか全く繋がらなくなってたの。その前日までは普通に繋がってたのに」
「なるほど、その復旧で一日潰れたってことなのね?
でもそんなに激怒(?)するほどのことじゃ……」
「何を仰る、ウサギさん!
これが怒らずにいられましょうか!? いいや、無理だね!」
「だから顔が怒ってないんだってば」
「私たちの表情のバリエーションは増えないからね。
しかも私ってば、口が開きっぱなしだから、どれだけ怒ってても笑ってるようにしか見えない。ワオ、ゴキゲンだぜ!」
「あー、うん。最後のちょっと古いアメリカンな言い回しで、怒ってるのが伝わってきた。で?」
「でね。昼過ぎまで粘って、色々調べて試したわけよ。
でも全然ダメだったから、『こりゃ不良品を掴まされたかな』と思って、PCを買った家電量販店に行ったわけ」
「ああ、無料サポートとかあるもんね。
でもそれが昼過ぎでしょ? 一日潰れたっていうことは、それじゃあ直らなかったってことだよね」
「その通り。いやー、私も初めて知ったけど、Window10って、最初の設定さえしておけば、有線LANのケーブルを繋げるだけで、電源入れるだけでネットに繋げてくれるんだってね! ハイテク!」
「いちいち語彙が古い! まずボキャブラリーをアップデートしようよ!」
「無理無理! むしろ一周回ってカッコ良くない?
パーペキ、とかスゴイ言いたい!」
「夏なのに寒気が……」
「って、んなことはどーでもいいの。
お店のケーブルを使って繋げた、ちゃんと繋がったわけ。勝手に。
だから『これはPCの問題じゃない』って分かったのね。
恐らく、ISP(インターネット・サービス・プロバイダ)の問題だろうと」
「そこまで分かったんなら、電話でもして聞いてみれば……。
あ、日曜だから受け付けてないのか」
「しかも、色々話を聞いてるうちに、夕方どころか夜になっててね。
仕方ないから月曜の朝一に電話して、ケンカしてやろう、と思ったわけさ」
「穏便にしなさい、穏便に」
「おいおい、話は最後まで聞きなって。そして最初の方を思い出しなって。一日潰れた、って言ったでしょう? つまり、回復したってことよ」
「ああ、そっか。ならよかったじゃない。なんで怒ってるの?」
「何となくの原因は分かったけど、その原因を引き起こしたであろう、マイク○ソフ○の横暴さに、ね」
「横暴さって……」
「どうやってネットに繋いでたか、って問題になるんだけど。
そもそも、ダイヤルアップ……電話回線を使った、従量制課金接続で繋いでたのね。まぁ、本来のWindows10では、ほぼほぼ使わない設定なんだけど」
「ふむふむ。それで?」
「で、Windows10って、勝手に更新プログラムをダウンロードするじゃん? どうもつい最近のアップデートで、その辺を勝手に弄られた、っぽいの」
「ぽい、って……確信は?」
「無いよ! そもそもネット環境とかPCの知識が、無いんだもん!
断片的な単語と情報の繋ぎ合わせと、夢と希望とフィーリングで理解してるからね」
「機械とはおよそ遠い言葉を……」
「いや、でも実際そうだと思うの。
Windows7が入ってる古いマシンだと、それまでと同じように繋がったんだもん。10だけで従量制課金接続の設定が、勝手にオフにされたってことは、それ以外に考えられないし」
「まぁ、いいけど……。で、それが分かったのが?」
「明け方だよ! 気が付いたら外が明るくなってたよ!」
「結局徹夜! それで一日潰れたって嘆いてたのね!」
「いや、もう……ホントにね……。
そりゃ、知識が無かったこっちも悪いんだけど、そもそもマイク○ソフ○がそんな余計なことしなけりゃ良かったのよ。ほんっと……」
「(ピー)してくれないかな!」
「にこやかに暴言吐いてんじゃないわよ」
「だってさー!?」
「はいはい。分かったから。
そもそも想像でしかない原因でしょうが。
お日様が上ったら、わたし達は休む時間なんだから、もう休みなさい」
「許すまじ! マイク○ソフ○ーーー!!」