当初は何とも思っていなかったですね。

えぇ、だから、プリンスのことが。




80年代の僕はMTV文化への嫌悪感・不信感の中でプリンスを処理していましたよ。
そう、【スリラー以降のマイケル】と同様に。

そして、あれは1990年のこと、、、

その頃の僕は「ポストパンク的なアレコレ」に完全に失望しきっていて、70年代のロックを聴き返していた頃。トッド・ラングレンの流れでブルー・アイド・ソウルなんかも聴き始めていましたね。でも、ブラックミュージックはまだ。(つまり、ブルー・アイド・ソウル経由でブラックに流れ込んでいく逆流型だったってことなのね)

そんなある日…

とある高級ハンバーガー店。
えと、チェリーコークとのセットで1500円ぐらいするお店。自分へのご褒美的に月に一度ぐらいの間隔で行ってたの。(あの頃は、独身だったからねぇ)

満足して帰ろうとしたら、「くじ引きをしていかないか」と声をかけられ。
で、くじを引いたら当たったんですよ。

プリンスのヌードツアーのチケットが。

1990/09/10 (月) の横浜スタジアム。
個人的には東京ドームの方がよかったのですけど(アクセス的に)。

で、音楽誌からセットリストを入手して、CDをレンタルして、セットリストどおりにカセットテープ(!)に編集して、聴いたダよ、毎日。
正直、ピンと来なかったダよ。
『パープル・レイン』、長過ぎるし。

MTV時代の残像感(つまり、レボル―ション時代のビジュアル感)と、ピンと来ない感と、横浜が遠い感が相まって、ちょっと足が重かったデスよ。
せめて肉マンでも楽しみに出かけたですよ、横浜に。

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2時間ちょいぐらいの公演が終わった時、スタジアムの出口に向かう途中、こんな会話を耳にしたんです。
「あのさ、プリンスって天才とか言われるじゃん? ねぇ、そう思えた?」

僕は、(ニヤニヤ笑いの)そいつのことを睨みつけていたんデス。

だって、プリンスは天才だったから。

楽曲も演奏も歌唱もダンスも演出も、何もかもが天才だったダよ、プリンスは。二時間もプリンスと向かい合えば簡単にわかるよ、ぷりぬが天才だってことは。
新バンド(ニュー・パワー・ジェネレーション)の演奏はサイコーだった。タフな音楽。
『Take Me With U』とか、録音音源よりも全然すごかったもん。

ヌードツアーの日本最終日にあたる横浜公演はプリンス来日歴の中でもベスト3に入ると言われている伝説のライブなんです。ノリノリのプリンスは「ヨコハーマ!」を叫び続けていた。後日、テレビでオンエアされた東京ドーム公演よりも明らかにプリンスはノッていた。(知人に聴いたところ、初日の東京ドームはダレダレで最悪だったんだって…)
僕はただ運だけでその伝説を引き当ててしまったんです。神様に感謝してます。
※本ページに掲載した写真もヌードツアー時のプリンス。今見てもサイコーの時期ですね!

その日から僕はプリンス信者になったダ。

ピンと来なかったはずの楽曲群がどれも「最高のオンガク」に聴こえるようになりましたね。(それを境に、あらゆるブラックミュージックが面白く聴こえるようになった!)
旧譜をガツガツと聴き漁りつつ、新譜が出るのが楽しみで。そして新譜を聴くたびに驚かされて。

それからは来日のたびに観に行った。
最後は、メイシオ・パーカーと一緒に来た時。2002年かな。
オープニングで「あれ?殿下がいない…」と思ったら、プリンスはいきなりドラムスを叩いていたっけな。

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えと、そんな僕も、近年、プリンスとはご無沙汰で。
『アート・オフィシャル・エイジ』(2014年)もレビューしようしようと思いながら、な~んかピンと来なくてね。

80年代のプリンスがサイコーだった人に『アート・オフィシャル・エイジ』はピンと来ないはずなのだけど、90年代のプリンス(NPJや"元プリンス"の時代ね)がサイコーだった僕にも『アート・オフィシャル・エイジ』はピンと来なかったのです。

挑発されていない感じが。 -- でも、聴きやすいんだ、『アート・オフィシャル・エイジ』は。それは認める。

いや、だからね、プリンスは僕のスタンスに変化を要求しているようでもあったのですよ。
いつまでもプリンスの挑発を待っている立場でプリンスを批評するのではなくて、一緒に歳をとっていけたら、ずっと楽しんでいけたなら、それはそれでいいだろ、と。
えぇ確かにそれはいいデスね。サイコーですね。
そんな風に思い直しつつあったところだったんです。いや、ホントに。

そんなことを思わせるプリンスを「失速」だとか「枯れた」とか批判するようなスタンスもこの際返上するぞ、と。
もう、さんざん世話になったしね。
後は、ただ一緒にい続けられること、長くプリンスの音楽を聴き続けられることを願っていたわけなのです。


そしたら、


プリンスが死んじゃった。


今朝、寝床で一報を知り、僕は大声で叫んでしまった。


あぁ、もう少し、一緒にいて欲しかったけどなぁ。
そうか、死んじゃったか…。


偶然なのですけど、
先月、プリンスの編集ファイルを作ったんです。
ほぼ全アルバムの楽曲を3本のファイルに編集してあったんですけど、各々が2時間の長尺で、全然聴かなくなっちゃっていたんで、その3本を1本にまとめちゃえ、と。

もう、編集方針は単純で。
(1)全キャリアを網羅する必要なし。
(2)ヒットシングルやライブでの定番曲などに固執しない。
(3)音楽的な先進性とか歌詞とかの話題作も、それを理由に選曲しない。
(4)日曜日の午前中に家族が過ごす空間で流して気持ちよくてハッピーな楽曲を並べる。
(5)長い曲とか、メドレー形式の楽曲は勝手に切り刻むことを許す。
(6)あとね、ノリノリに始まったのに中盤からダレ始める楽曲もガンガン除外した(プリンス楽曲ってそのパターン多くね?)

そーいう方針で再編集した『ベスト・オブ・プリンス』だったのですけど、

これ、聴きやすくて、実はちょいちょい聴いていたんです。
3月~4月と聴いていたダよ。* 春に聴く「イケイケなプリンス」はサイコーで。

あ~、僕は、ついに、そーいう気持ちでプリンスを楽しめるようになったんだなぁ。
先進性や、過激性や、悪意や、過剰な肯定感や、哲学などを求めるよりも、気持ちや身体をノセてくれるビート感の方がピンと来るんですよ、今の僕は。

このビートを残してくれたんですね、殿下は。

それとね、ポップなバラードがいいですね。
僕、『Starfish And Coffee』が大好き。涙が出てくる。
ファルセットでキメるプリンス十八番のスローバラードは殿下の歌唱力に酔うわけなんですけど、泣けはしないですもん。『Starfish And Coffee』は格別ですね。
『The Morning Papers』もポップなバラード。これもいいなぁ。

極上の声を残してくれたんですね、殿下は。

なんでぇ、僕はプリンスと一緒にい続けられるんじゃんか。


ありがとね、殿下。 -- 本当にお世話になりました。

あなたのことを尊敬していましたよ。


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ごめん。

こんな書き方しかできないよぉ。

もっと丁寧に書くべきなのだろうけど、それをしたら、俺、きっと、号泣しちゃうから。
プリンスが死んじゃっただなんて、そんなの無いことにしておきたいから。

こんなんで勘弁して。

なんで死んじゃったんだよぉ…。

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『ベスト・オブ・プリンス』
1.Soft And Wet
2.When You Were Mine
3.Do It All Night
4.Sister
5.Partyup
6.Little Red Corvette
7.Take Me With U
8.I Would Die 4 U
9.Raspberry Beret
10.Kiss
11.Under The Cherry Moon
12.Do U Lie?
13.Play In The Sunshine
14.Starfish And Coffee
15.The Future
16.Partyman
17.Batdance
18.Can't Stop This Feeling I Got
19.New Power Generation
20.Willing And Able
21.My Name Is Prince
22.Sexy M.F.
23.The Morning Papers
24.7
25.Dinner With Delores
26.Jam Of The Year
27.Wedding Feast


これ、『ヌードツアー』東京ドームの映像ですね。
やべ、涙が止まらなくなっちゃった・・・
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