「もぅ・・・・」
そう言って僕に少し拗ねた顔を見せる姿が
何とも可愛らしいと言うこと。
きっと君は知らないだろうね。
「今日ね・・・」
そう言って僕に嬉しそうに話してくれる姿が愛しい。
大人気なくても
「あ・・・・」
君の姿を見つけ、声をかけようとしたが
目の前の光景に思わず動きを止めてしまう。
「しかし・・・」
「無理は駄目ですよ」
九郎に、優しく言葉をかけて微笑む君の姿に
思わず息が止まりそうになる。
分かっているんだ。
君は優しい人
傷ついた人や君が大切だと思っている人には
ああして微笑み、労りの言葉を掛けると言うこと。
その瞳が決して僕だけに向けられているものではないと言うこと。
「ちゃんと休んでくださいね」
「ああ・・・わかっている」
九郎も彼女の言葉に素直に頷き返事を返すと
ホッとした表情を浮かべ二人で屋敷へと戻る。
「へぇ?」
「・・・・・・・盗み見とは・・・いい趣味ですね・・ヒノエ」
「いや・・・・偶然だよ」
心外と言わんばかりに肩をすくめ、ヒノエが僕の隣りに立ち
肩に肘を乗せながらニヤリと笑みを落とす。
「あんたでも、そんな顔するんだな」
「・・・・・どういう意味です?」
「誰にも優しい軍師様でも・・・彼女には敵わないって?」
「うるさいですよ」
「ははっ・・褒め言葉として受け取るよ」
「あ!ヒノエくん。弁慶さん」
ジロリとヒノエを睨んだ瞬間、これもまたタイミングがいいのか
彼女が僕とヒノエを見つけて
手を振りながらこちらへ走ってくる姿が瞳に写る。
「・・・・・どうしました?」
「やあ・・・姫君」
「あのね・・・・九郎さんが体調・・悪いみたいで・・
薬の調合を・・・」
「・・・・・・・・・・」
君の口から『九郎』の名前を発せられた瞬間
心の何かがカチャリと開いたような感覚に落ちる。
「おい・・弁慶・・」
「弁慶さん?」
ハッとなって思考を戻すと、苦虫を潰したようなヒノエと
少し驚いて僕を見ている彼女の姿があった。
「ああ・・・すみません・・・薬ですね・・・」
「あ・・・はい・・・」
「すぐにご用意しますから・・」
これ以上、彼女の姿を映す事など出来ない。
早口に答えその場から逃げるように立ち去った。
あとがき
仕事が終わったら、このお話の続きを書きますね。