あなたの傍に居られるだけで
それだけでいいのに
Lotus
誰も知らない 知られたくない
悲しみをそっと眠らせたまま
今でもよみがえる記憶
願いを今この手に真実を求めて
誰も知らない物語始まる
君が居るから迷うことは無い
涙は流さないその日まで
まだ見えない未来を恐れることはない
今見える現実を進めばいい
「咲弥」
「将臣?」
遠くに上る土煙。
そして人の声。
小高い丘の上からその様子を眺めている咲弥の隣に立ち
将臣も同じように広がる光景を黙ってみていた。
「この戦火・・・・長引かせるわけにはいかねえな」
「・・・・・・・・・そうね・・・」
「還内府殿、軍師殿っ!」
お互い返事を交わした瞬間、味方の兵士の叫び声と同時に
襲い掛かってくる敵兵。
「遅いんだよ」
振り返った瞬間、振り下ろされた刀。
辺りに飛び散る血飛沫。
その様子を顔色一つ、眉一つ動かさず咲弥は黙ってみている。
「も、申し訳ありません!」
「ご無事ですか!」
「ああ、心配するな」
「将臣、下がって」
安否を確かめる兵士に、いつもと同じように返事を返す。
すぃ・・と咲弥が前に出ると外套を脱ぎ捨てる。
「おい・・・・」
「これ以上の時間を割きたくない」
同時に咲弥の周りがひんやりとした空気に包まれる。
「源氏の大将の首を落とせば、この戦いは終わるわ」
言葉と同時に、いつの間にか咲弥の手にある弓矢。
ぎりり・・と弦を引き放つと一直線に飛んでいった。
「帰るわ、兵に連絡を」
「・・・・・・・マジかよ」
再び外套を羽織るとにっこりと微笑む姿に将臣は頭をかいた。
「あの・・・還内府殿・・」
「引き上げだ。姫軍師の言葉、聞こえなかったか?」
「は、はいっ!」
踵を返しその場を去っていく兵士を見ながら、将臣は咲弥へ視線を向けた。
「今日はらしくねえんじゃないか?」
「・・・・・・・・・」
「咲弥」
「そうね・・・でも、これ以上ここには居たくないから」
「おまえ」
ぐぃ、と肩をつかみ向きなおさせるとそこにはいつもと変わらない咲弥の顔。
「泣いてなどないわ」
「咲弥・・」
「大丈夫」
まだ言いたげな将臣を残し咲弥は歩き出す。
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あとがき
何となく書きたかったのですが、うまい具合にかけたのかは謎(おい)
人は誰もが悲しみを抱えて生きているって事です。