閉じた瞳から流れた涙・・・。
月光
本当に偶然だった。
十六夜の月を眺めながら皆で楽しく過ごした宴。
そんな賑やかな宴をこっそり抜け出し
月明かりが地面を照らす中
弁慶は空き部屋の襖が少し開いているのに気がついた。
「?・・・ここは・・・」
誰も使用してないはずの部屋。
しかし微かにだが人の気配がする。
宴の中に紛れて何かが侵入したのだろうか?
弁慶の周りの空気が変化し、ゆっくりと部屋へ近づき
覗くと、すぐに空気がいつもと同じに戻る。
「・・・・ここで寝ているとは・・」
音を立てずに襖を開くと
部屋の中心で、身体を丸めて寝ている咲弥の姿。
穏かな表情で彼女に近づき、そっと手を伸ばした瞬間
その手がピタリと止まった。
蠟燭の明かりが無くても、月明かりで分る。
彼女の閉じた瞳から流れる涙。
「・・・・で・・・」
微かに聞こえた彼女の悲しげな声
震える唇から紡がれた言葉が何を言ったのか
聞き取れなくても、再び流れ落ちた新たな雫に
弁慶は眉根を寄せる。
「・・・・・・どうして・・・君は・・・」
そっと抱きしめ包み込むように自分の腕に寄せて
髪に己の唇を落とす。
無意識だろうか
弁慶の着物の袖を掴む咲弥。
「・・・・・ないで・・・」
「・・・・・・・安心してください・・・・僕は君の傍にいますよ・・」
耳に届いた声に応えるように返事を返した弁慶に
咲弥は微かに笑みを零し、弁慶の熱を欲しがるかのように
顔を胸の中に埋め、そんな咲弥を弁慶は優しく抱きしめ
外の月を見上げた。
秋の言葉より お題配布先 「恋したくなるお題
」 管理人ひなた様
■□■□■□■□■□
あとがき
中秋の名月。
天気が良かったので、月見酒を・・・と思ったのですが
それは今の仕事状況じゃ無理なのでお団子だけで・・。
すごく綺麗で、電気をつけなくても月明かりで十分でしたね。
今年は綺麗な満月を見ることが出来てよかったので
思わず書いた作品です。