愛の行方 | As lagrimas que a lua derramou~月が零した涙

As lagrimas que a lua derramou~月が零した涙

版権作品にオリジナル人物を入れての二次創作小説を載せてます。
『遙か』シリーズが中心です

「どうしたの?」


聞こえた声に振り返ると、望美が傘を差し

首を傾げながら近づいてきた。






愛の行方



「いや・・・・・。なんでもない」


将臣はそう言って、降り続ける雨をじっと眺めているだけ。

望美も、それ以上何も言わず同じように雨を眺め始めた。


「お前・・・・弁慶と付き合っているんだな・・」


「え・・・?」


突然告げられた言葉に、望美は勢いよく振り返る。

将臣は笑みを落とし、頭を軽く叩くと「良かったな」と

一言告げると片手を上げて、雨の中を歩き始めた。


「ま、将臣くん・・・濡れちゃうよ!」


「大丈夫だ・・気にするな」


振り返らず返事を返し、歩き始めた将臣を望美は

黙って見送ることしか出来なかった。











**


「咲弥・・・・ちょっといいか・・」


声をかけ、返事を待たずに開いた襖。

そして部屋に居る咲弥は、苦笑しながら部屋に置いてあった

座布団を出して座るように促す。


「悪ぃ・・な」


「いいよ。ちょっと悲しそうな顔しているから」


咲弥は何も言わずに、酒と杯を将臣に差し出した。


「用意がいい事で」


「お褒めの言葉と受け取るわね」


言いながら杯に注ぐ酒を眺め

注がれると一気に飲み干す。


「・・・・・・・・意外?」


「何が?」


「望美ちゃんと『弁慶』くんが一緒になるのは」


咲弥の言葉に、将臣はピタリと動きを止めた。

そんな将臣の動きに咲弥は何も言わず

再び杯に酒を注ぎ始める。


「・・・そんなんじゃねえよ・・」


「そう?」


それ以上は何も言わない。

部屋に静かな空間が広がった。


「ねえ・・将「失礼します」」


部屋の外から聞こえた声に、咲弥も将臣も動きを止めて

そちらへ視線を向けた。


「咲弥さん・・明日の・・・・・・おや?将臣くん」


「・・・・・・・」


「明日の事で何か?」


咲弥の部屋に将臣が居たことに、一瞬目を開いた弁慶だったが

すぐにいつもと同じ顔を見せて咲弥に話し始めた。

その様子を将臣はじっと見つめるだけ。


「では・・・失礼しますね」


「はい。おやすみなさい」


一瞬、自分に向けて視線を向けたことは知っていたが

それに気がついていないかのように、酒を口につけた。


「咲弥・・・」


「なに?」


「別に望美が誰と付き合おうと知ったことじゃないんだ」


弁慶が部屋を去って直ぐに口を開く。


「俺はそんな駆け引きなんて出来ないから」


「将臣?」


杯を横に置くと、咲弥の腕を引き自分の腕の中に引き寄せる。


「お前が俺を見てくれる。それだけで十分なんだ」


「将臣・・」


少し眉を寄せて将臣を見つめる咲弥の頬にキスをし

おそらく外で聞いているであろう男に告げる。


「近場の女で満足は出来ない。お前が俺を愛しているなら

誰も必要ないんだよ」










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あとがき

以前、まおさんのリクエスト『境界線』を更新したところ

この続編を書いて欲しいとリクエストがありました。


きゃらめるさん・梓さん・那岐好きさん。如何でしょうか?