勘弁してほしいよ
猫の本音
「異論がなければ、連れて行くわよ」
「一緒に入ろうね」
「私は着替えを用意してから来るわね」
女性陣が部屋から出て行く姿を八葉は見送るしか出来なくて
顔を見合わせると盛大なため息をついた。
「女って・・・わからない」
九郎の言葉に、みんな同じ思いを抱えていたことを
この時いない人たちにはわからなかった。
**
「望美ちゃん、先に身体を洗って」
「はーい」
身体を隠しながら湯室に現れた望美に
咲弥は濡れないように小さめの布でくるんでいたヒノエ(猫)を
望美に手渡し、「私も着物を脱いでくる」と告げると一旦その場を離れた。
「気持ちいい?」
本来の猫なら、湯室を嫌がるが
中身が人間なので静かなものだ。
泡立てた石鹸で、ワシャワシャと身体を洗い水をかける。
「おとなしい・・・。それにやっぱり可愛い~」
「まあ、望美ったら」
濡れているヒノエ(猫)が、身体を震わせプルプルとしている姿が
あまりにも可愛らしくて思わず抱きしめた。
湯気が立ち込めているため、辺りがよく見えない。
しかし
「あれ・・・・?」
湯室に入るときとは少し違う感触。
ふわふわとした猫特有の毛の感触ではなく
目の前に写るのは、均整の取れた滑らかな人の肌。
「私・・・朔に抱きつい・・・た・・?」
「違うよ、神子姫様」
頭上から聞こえてきた甘い声。
ありえないと思いながらも、現実を把握したくて顔を上げると
深い笑みを見せながら、腰に手を回しているヒノエの姿。
「え・・・ええ・・・・?なん・・・」
「効力が切れたみたいだね。しかし・・・神子姫のその姿は
さすがの俺でも理性が飛びそうだな」
その言葉にようやく自分のしている状況を理解し
顔を真っ赤にしていると、ようやく湯気が晴れて近くに居た朔も目を丸くして二人を見ている。
「の、望美?・・・と・・・ヒノエ殿・・」
「あら。残念戻ったのね」
「咲弥の肌は見れなくて残念だね」
「そう?でも、そろそろ望美ちゃんから離れて」
「はいはい。つれないね」
咲弥の言葉に、ヒノエはゆっくりと望美から離れ
外でこの状況を見ている咲弥の所へ歩いてく。
「ああ・・・・また俺を入れてくれると嬉しいな」
ピタリと足を止めて振り返ると、そんな言葉を放ったヒノエ。
「いやぁぁぁぁ!!もうお嫁にいけない~~!」
「どうした!声が聞こえたが!」
「きゃぁぁぁぁぁ!!九郎さんまで!出てって!!」
「す、すまない!」
館に響いた声に、勢いよく扉を開く九郎の姿に
再び叫び声が湯室に響いた。
***
「す、すまない!」
「も、もう・・・いいです」
真っ赤な顔をしながら謝る九郎、そして同じように顔を赤らめている望美。
「・・・・・・しかし、湯室に入ると元に戻るなんて」
「それは、景時がわかるのでは?」
弁慶の言葉に、全員で景時に視線を向けたが
作った本人もどういう要素が働いたのかわからないと告げる。
「まあ、目の保養にはなったからいいよ」
「ヒノエくん見たの!」
「見たのっていうか、神子姫は俺を抱きながら湯室に入ったじゃないか」
「そ、そうでした・・・」
言うことありません、とうつむく望美に咲弥は
意地悪そうな顔を見せヒノエに視線を向けるとその視線に気がついたのか
ヒノエも咲弥に視線を合わせた。
「なに?」
「熊野の男の人は本当に『策士』だわ」
そっと近づき耳元で告げられた言葉に目を開くヒノエに
咲弥は人差し指を唇に当ててにこりと笑みを落とした。
「・・・・・・さすがは『姫軍師』って事で」
「ふふふ」
「何を話しているんですか?」
「内緒」
眼鏡を上げながら訊ねる譲に意味深な顔を見せて
ヒノエと顔を見合わせ笑顔を零す。
そんな二人に気がついた、他の仲間は首を傾げる。
「これも、一つの願い事よね」
※湯室(ゆむろ)このお話ではお風呂の事を湯室と書いてます。
湯室は『お風呂』を昔はこう言っていたようなのです、
諸説言い方があるみたいですが、こちらでは『湯室』でお願いします。
この時代はお風呂は毎日入る習慣はなくて、一週間に一回だけ『蒸し風呂(現在のサウナ)』がお風呂のようです。後、源泉から流れっぱなしの水に半身浴だったそうです。
まあ、創作の妄想ですので、ご理解の程よろしくお願いします。
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あとがき
この話の裏話は、後ほど・・・。こっそりと隠して載せます。
興味があれば読んでくださいね。
うらうら裏話って銘打って載せてますから・・・。
探せないよ~~。って人は連絡をいただければこっそり教えます
↑なら隠す意味無いけど・・
コメディっぽいお話を書きたかったので、書いてみました。