「あれ?」
「おや」
思わず出てしまった声。そこには可愛らしい赤毛の猫が
ちょこんと首をかしげてみていました。
猫の本音
廊下に無造作に置かれている服。
そして湯呑。
「・・・・・ヒノエ?」
そう訊ねるとニャーと返事を一つ。
咲弥の手をペロリと舐め、トンッと咲弥に抱きつく。
「・・・これはどういうことかしら?」
猫の顔を覗きこみながら咲弥は隣にいた弁慶に訊ねる。
「僕の許容範囲を超えてます」
だからわからないのだと言われ、抱いている猫へ視線を向けると
小さくあくびを一つ。
身体を摺り寄せゴロゴロと喉を鳴らし目を細める。
「可愛い」
「普段のヒノエからは想像がつきませんけど」
「いいじゃないの」
廊下を歩きながらみんなの居る部屋に入る。
「あれ?咲弥さん。この猫・・」
「可愛いでしょ?ヒノエくんだよ」
「「はぁぁぁぁ!!!」」
咲弥がみんなに見えるように差し出した赤毛の猫。
告げた言葉に将臣と九郎は驚きの声を同時に上げている。
「うん、さすがは天地の青龍」
「いや、そこは褒める所じゃないだろ」
「ヒノエくんってどういう事ですか?」
望美は咲弥の腕の中に居るヒノエ(猫)をマジマジみながら
顔を上げて訊いてきた。
その理由は咲弥もわからない。
「なんでといわれても・・・・縁側でぼんやりしていた猫を見つけたの。
隣にはヒノエくんの服と・・・・ああ、湯呑が転がっていたわね」
状況を思い出しながら話す咲弥。
「湯呑?」
「そういえば・・・さっき朔に喉が乾いたってお茶を頂いていたね」
「え、ええ・・・でもあのお茶は確か――」
「ストップ」
「将臣?」
「どうしたんだ?いきなり」
朔の言葉を遮る将臣に視線が集まる。
しかし、将臣の視線は別の方へ注がれていて、みんなはその視線の先へ向けると
部屋から逃げようとしている景時の姿があった。
「――― どこへ行くんだ?景時」
「兄上?」
「い、いや・・・あははは・・」
乾いた笑いを見せる景時。
「まさ・・か・・」
譲の言葉に、誰もが景時の返事を待っている。
もう、逃げることが出来ないと悟った景時は勢いよく頭を下げた。
「説明してくれますか?」
「実験をね・・・・」
「実験ですか?」
しどろもどろで話す姿は、悪戯がバレた子供ようだと思う。
「ちょと・・調合が間違って、猫になったんだと思うんだ」
はははは・・・・、と笑う景時に、朔は呆れた顔で自分の兄を見て
ちょこんと咲弥に座っているヒノエ(猫)を抱き上げるとぎゅっと抱きつき
謝罪の言葉を述べた。
「でも・・」
「先輩?」
「めちゃくちゃ可愛い!!抱っこさせて」
キラキラと目を輝かせ、ヒノエ(猫)を抱き上げ頬擦りする望美。
そんな望美に、ニャーと可愛らしく鳴き、ぺロッと頬を舐める行動に
くすぐったいと笑う望美。
「本当に可愛い・・・お風呂にいれちゃう?」
「いいですね!」
「ちょっと汚れているし、一緒に入れましょうか?」
「って!おい、待て!!」
慌てたのは男性陣だ。
いくら姿が可愛らしい猫だといっても中身はヒノエなのだ。
「おおおおおお前らわかっているのか?ヒノエなんだぞ」
「あら。九郎も一緒に入る?」
「~~~ッ!ははは入るわけないだろう!」
顔を真っ赤にして咲弥に告げる九郎を見ながら
望美と朔に声をかける。
「猫って近眼じゃないの?なら見えないわ」
「その根拠はどこからくるんだよ」
「さあ?まあ、問題ないわ」
咲弥の言葉に呆れながら将臣はジロリとヒノエ(猫)に顔を向けた。
「いいか、見るんじゃねえぞ」
『にゃ?』
言っている意味はわからないが、何となく馬鹿にされたようで
腹が立ったと将臣は思った。
つづく・・・・・
↑えっ!続くの!(望美)
これはまずい展開ですね(弁慶)
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あとがき
すみません、ちょっと続きにしてしまいました。
えへへへ・・・。
次の視点は猫(ヒノエ)視点って事で。
とりあえず今日は逃げますε=ε=ε= ヾ(*~▽~)ノ