いわれない罪はどんな場所へいっても付きまとい
私の心を苛む。
「咲弥」
「心配ないから」
必死に心を封印し、感情を押し殺す。
胸が痛い。心が張り裂けそうで――。
必死で唇をかみ締め、奥歯をかみ締め。
私は広がる光景をじっと見つめる。
これは罰なのだから。
目を背けることはできない。
『お前は鬼だ!人殺しの鬼だ!!』
私をかっと見開き吐き出すように告げた言葉は
胸に残る。
腕にべっとりとついた赤い雫はどんなに洗っても落ちることはない。
頬についた傷は癒えても、私の記憶に残るだろう。
『お前が!お前が!』
残りの命を振り絞り私の胸倉をつかんで放つ言葉は私に迷いをもたらす。
けれど――――――。
「先へ進みます」
「・・・・・・わかった」
ぐっと言葉を飲み込み、握る手は自分の力で皮膚を食い破り
血を落とす。
乾いた風は、鉄のにおいが私の鼻をつく。
大地はすでに命がない人の躯(むくろ)
「選ぶのは自分。そして向き合うのも自分」
「咲弥・・?」
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体も心も痛まないはずがない。
けれど、彼女はまっすぐに前を見て何を思っているのだろうか。
『お前は鬼だ!人殺しの鬼だ!!』
有無を言わせず切り伏せる彼女の姿に
仲間を殺された怒りと自分が死と向き合った敵兵が彼女に放った言葉。
べっとりと血が彼女の体について
その場が異様な雰囲気があるのがわかる。
『お前が!お前が!!』
彼女の胸倉をつかみ最後の言葉を振り絞り
絶命した男を彼女はどう感じたのだろうか・・。
「先へ進みます」
「・・・・・わかった」
気休めの言葉など存在しない。
それは彼女の心に響かない。
彼女はそれを望まないことを知っているから。
「選ぶのは自分。そして向き合うのも自分」
「・・・咲弥?」
ぽつりと呟き、振り返った瞬間。
彼女の瞳は冷たい色を帯びていた。
それは狂気にも似た色。
けれど、瞳の奥は悲しみの色があった。
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あとがき
新年早々、なんと暗いお話からスタートなのでしょうか?
将臣とヒロインの会話って事で・・・。