冷たい風が吹き始め、夏のにおいから秋のにおいへ変化してきたのだと
夕暮れを一人歩きながら感じていた。
いつもなら賑やかな帰り道。
けれど今日は何となく一人になりたくて
誰にも、会いたくなくて一人外へ出てぼんやりと一日を過ごした。
(帰ったら、きっと怒られるのかな?)
望美が走って駆け寄り、「どうして一人で出かけたのか」と詰め寄るだろう
それを譲と朔がなだめ、敦盛はオロオロしながその様子をみて
リズヴァーンは黙ってみているだけだろう。
九朗も望美と同じように言いながら、「女一人で出歩くなんて・・」と愚痴を零しそうだ。
景時がいつもと同じ笑顔で九朗を落ち着かせ、ヒノエは「一緒に行きたかった」というのだろうか。
弁慶はそんな様子を黙ってみながら館に入るように促すのだろうと。
これから帰る場所を思い浮かべるだけで、思わず笑みがこぼれる。
(こんな風に、誰かと一緒に居て落ち着いた日々はない)
思わず時空の違う世界を思い浮かべる。
人とは一定の距離を置いて生活をしていたあの頃に比べたら格段に変化している。
だからこそ、時折不意に一人になりたいのだ。
この世界に来た意味。
この世界でなすべきこと。
(わかっている・・・。わかっているの)
足を止め、自分の両手をじぃ・・と見つめ目を伏せた。
頬に当たる風が少し冷たくて、思わず自分の体を抱きしめた。
知らずに視界がぼやけてきた。
「・・・・・なんでだろう」
その場にしゃがみこみ、こぼれる涙をぬぐうことなく唇をかみ締めた。
幸せだからこそ、悲しい。
これから待ち受ける未来を思うのが苦しい。
「でも・・・・・」
立ち上がり、涙を拭いてあたりを見渡すと、すでに日は落ち
空には星が輝き始めている。
「信じれば・・・・。きっと」
深呼吸をすると、再び歩き始めた。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
あとがき
夏から、秋へ変化するこの時期が一番好きです。