しとと・・・。
外は雨が降り続き、時折戸を打ち付ける雨音に視線を向け
しばらく見つめたあと小さくため息を吐く。
もうこれで何度目だろうか?
「駄目だよね」
つぶやきながら倒れ天井を見つめる。
目を閉じると雨音だけが部屋に響く。
なんの音も聞こえない。
聞こえるのは雨が地面に落ちる音だけ・・・・。
「ねえ、どうしたらいいのかな?」
その問いに答えることはない。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本当に偶然だった。
雨音と一緒に聞こえた人の声。
閉じていた襖を開けると、雨に打たれ嬉しそうに微笑んでいる姿が目に映る。
何を思って雨に打たれているのだろう。
じっと動くことも出来ずに黙って見つめていること数分。
「一緒にどうかしら?」
「・・・弁慶さんに怒られてもしりませんよ」
僕の言葉に咲弥さんは、微笑みながら首をかしげ空を仰ぎ見る。
顔に雨がおち、まるで泣いているように写る。
「願いって、いつ叶うかな?」
傘を差し出した僕にいつもと同じような微笑で訪ねる。
咲弥さんはあまり感情を変えない。
それは大人だからなのだろうか?
いつも笑顔で僕達を見つめて、困ったときにそっと手を差し出す。
まるで母親のようなそんな存在。
「譲くんはどう思う?叶うって思っている?」
「思ってますよ」
僕の答えに頷くだけで、それ以上の言葉はない。
「さて、戻りましょうか?貴方まで体調を崩してしまったら、弁慶くんだけではなく
九朗くんにも怒られてしまうわ」
不意に視線を地面に落とし、表情がどことなく悲しげに思えたが
顔を上げるといつもと同じ笑顔で僕を見つめ、手をとり屋敷の中へ。
「咲弥さ――」
「貴方は覚えてくれるかしら・・・」
「え?」
「なんでもないわ」
屋敷に戻って、ずぶぬれの僕達に着替えや飲み物を差し出しながら
小言を告げる朔さんがいなくなった後、咲弥さんは僕の言葉を遮り告げた言葉。
聞き返したが、小さく首を振って彼女は僕から離れていった。
「・・・・・」
「あれ?譲くん?どうしたの?」
ひょっこりと顔を出して、ぼんやりとしていた僕に先輩が声をかける。
「なんでもないですよ」
僕の言葉に先輩はいつもと同じように笑顔を見せて
雨を見つめている。
「願いは叶うかな?」
「譲くん?」
「いや・・・。あの・・」
思わず咲弥さんが僕に告げた言葉を口に出していたみたいで。
不思議そうに僕を見つめている先輩に慌てて言葉を捜してみたけど見つからなくて。
「叶うよ。だってみんながいるもの。」
迷いない瞳で僕を見つめる先輩の姿に、何かすとんと胸に落ちた。
咲弥さんが尋ねたとき僕は、迷うことなく告げただろうか?
ひょっとしたら、すこし不安があったかもしれない。
その迷いを咲弥さんは見たのかもしれない。
「そう、ですよね」
「変な譲くん」
くすくすと笑う先輩に同じように笑みを返しながら
僕はまだ降り止まない雨を見た。
(今度尋ねられたら、僕は――――)
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あとがき
う~~ん。不完全燃焼って感じでしょうか?
すみません。2、3日後にもう一度手直しします。
(なら載せなければいいけど・・・。これもこれで気に入っているので)
とりあえず初の有川譲くんです。
彼は・・・。オリジナルヒロインより先輩が大好きなので、恋愛対象外って事で。