「別れを」
告げられた言葉に弁慶は愕然とした。
終わったと思った戦い
白龍が力を取り戻すために必要なのだといわれ
奥へ消えていった二人。
しかし何時までたっても戻ってくることなく
あたりを光が包み込む。
光が収まると同時にリズヴァーンが、朔が持っていた着物を受け取り
奥へ入っていく
しばらく待っていると彼の腕の中にいる人物
「咲弥さん!」
望美は嬉しそうにかけていく
眠っているのだろうか。
穏やかな表情の彼女の姿に誰もが予想しなかった
望美が彼女の腕にふれると力なく腕が垂れ下がる
「咲弥さん?」
「神子」
あたりの空気が一変する。
「先生?咲弥さん、寝ているだけですよね」
「神子」
「・・・・咲弥さん。冗談は駄目ですよ」
「神子、別れを・・・」
「嘘!」
リズヴァーンの言葉が信じられないのか望美は大声を出す
八葉も彼女の姿に驚きを隠せない。
何故こんなことになったのかすらわからない
「白龍へ力を与えるとき、彼女の命も差し出す
神は慈悲深さだけを持ち合わせているものではない
彼女は理解していたのだ」
「理解していた?」
その言葉に怒りが隠せない
彼女が命を差し出さなければこの世界の清浄が戻らない?
何故?
ナゼダ・・・・
「こんな世界・・・・望んではない」
「弁慶?」
「約束したではありませんか
僕の隣にいると
僕の妻になると・・・・」
まるで眠っているように見える
咲弥に弁慶は囁きかける。
「僕を愛していると告げたではありませんか」
「弁慶!?」
止める時間すらなかった
弁慶は自分の喉を欠き切り咲弥の上に倒れる
「僕が・・・
貴方の傍へ行けばいいんだ」
「弁慶!!」
溢れ止まること無い血が
あたりを染める
べっとりと血がついている手で
愛おしく咲弥の頬を撫でると
そのまま口付けを落とす。
「愛して・・います」
それが彼の最後の言葉になった
【いえないままの5のお題】より
管理人 starry-tales様
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あとがき
こんな終わり方、翡翠の雫でも書いた気がします。
現在更新中の作品のひとつとして考えていた話の一つです。
けれど、微妙におかしくなりそうだったので
急遽短編に切り替えました。