茜色の空 | As lagrimas que a lua derramou~月が零した涙

As lagrimas que a lua derramou~月が零した涙

版権作品にオリジナル人物を入れての二次創作小説を載せてます。
『遙か』シリーズが中心です

ふと、気がつくと風が冷たくなってきているのが分かる。








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「どうしたんですか?」


白龍の神子である望美は、ぼんやりと空を見上げている咲弥に

声をかける。

しかし望美の声も聞こえてないのか、咲弥は空を見上げたまま。

首をかしげて、同じように空を見上げる。

夕陽が空を染めていて、辺りに柔らかな風が二人を包んでいた。


「・・・・帰ろうか」


ゆっくりと空から視線を望美へと戻し、咲弥は

笑顔を浮かべながら、手を差し出した。


「子供じゃないですから・・・」


「そうね」


少しすねた言い方の望美に、咲弥は差し伸べた手を戻して

歩き始める。

その後ろ姿をみた瞬間、望美は咲弥へ向かって駆け出し後ろから抱きしめる。


「望美ちゃん?」


「絶対!絶対!みんなで生き延びますからね!」


「・・・どうしたの?」


背中に抱きついた望美に咲弥は顔だけ後ろへ向けて

望美を見詰めるが、望美は顔を背中にぴったりとくっつけて

表情が見えない。

しかし、少しからだが震えている。


「大丈夫よ」


「・・・・・・」


「みんなで、必ず、ね」


優しく後ろに抱きついている望美の頭を撫でながら

咲弥は言葉をつむぐが、望美は答えを返すことが出来ない。

あの姿を見た瞬間、とても切なく思った。

苦しくて泣きたくなった。


「貴方がみんなを導いてくれる」


「・・・・そんなこと、ないもん。咲弥さんみたいにできない」


「あらあら・・」


くすりと咲弥は笑い、もう一度頭を撫でてあげた。







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「今日は、どうしたんですか?」


弁慶は目を丸くして

咲弥に訪ねた。

食事のとき、ドコか口数が少なかった望美。

誰もが体調などを心配したのだが、

本人は「そんなことない」と否定する。

どこか不自然に思えた望美の様子を見に来たが

部屋にいなくて、そしてかすかに聞こえた歌声。

導かれてたどり着いた咲弥の部屋に

小さな子供のように身体を丸めて

咲弥の膝に枕をし、寝ている望美の姿が写った。

人差し指を口にあて、静かにするように

咲弥は弁慶に告げる。


「ようやく寝たから・・・」


「やはり、どこか具合でも?」


「そんなことないわ。明日になったらいつもの彼女になるわよ」


「・・・そうですか・・・」


髪を撫でて咲弥はもう一度歌い始める。

外からは、虫の声が聞こえ始める。


「もう、秋ね」


「そうですね。戦いばかりでしたから

 気がつかなかったですね」


「望美ちゃんも、そういうことなのよ」


微笑を浮かべ告げた咲弥に、弁慶は

再び首をかしげた。


「望美ちゃん・・・・。大丈夫だからね」


咲弥の声が聞こえるのか、望美は嬉しそうな顔を見せた。





                              【秋に奪われる心】5のお題より
                              管理人starry-tales

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あとがき

最近太陽や風が柔らかくなってきましたね。

そんな時、なぜか切なく思うのは私だけでしょうか?

今回は望美ちゃんとオリジナル主人公のやりとりを書いてみました。

途中弁慶が出てきてましたが・・・。

未知なる世界に迷い込んできた望美ちゃんの一瞬の休息というイメージ・・・。

果たして出来ているのか(ビクビク・・)