26年予備論文 憲法 答案 | magaterの予備試験勉強記録

magaterの予備試験勉強記録

とある予備試験受験生の勉強記録です。
受験仲間に競争心と仲間意識とやる気と勇気を!
※合格してないので格好良い法律記事は書き(け)ません。

設問1


 C社は、本条例が営業停止による制裁を用いて、実質的に商店会への強制加入義務を課す点で、C社の結社の自由を侵害し、違憲である旨を主張する。

(1)①結社の自由(憲法21条1項)は、団体を通して意思の形成・実現を図るという精神的自由の一類型として保障される。条文の立て付けとしてもそのように解するのが相当である。そして、性質上、法人にも結社の自由が保障される。

 ②本条例は、地域で商店会に加入しない者に対して、7日間の営業停止が命ぜられることによって実質的に強制加入が採用されいる。そのため、C社が団体に加入することを強制されないという結社の自由を制約する。

 ③そこで、この制約が公共の福祉(13条)の範囲内で、正当化されるかが問題となる。

 正当性の判断にあたっては、集団の意思形成は、個人の意思形成よりも外部への影響力が大きいこと、7日間の営業停止命令がC社の営業活動のそのものを禁止する強力なものであること、C社を利用する消費者にも大きな不利益を与え得ることを鑑みて、厳格にするべきである。

 具体的には、目的が正当か、手段が他に選びうる緩やかな手段が無いか、を検討するべきである。


(2)①本条例の目的は地域活性化及び防犯としており正当である。

 ②本条例が目的達成のためにとる手段は、大型店を最寄りの商店会に実質的に強制的に加入させて会費を納入させることによっている。

 そもそも、本条例の恩恵はC社のみでなく、商店街の店舗や地域住民全体が享受するものである。にもかかわらず、商店会への実質的強制加入という手段を通して、C社に、他の会員の平均会費の50倍の金額を納付するといった極端な負担を課すことは、著しく相当性を欠く。 

 費用を投じて地域の商業活性化及び防犯体制の整備を図るのであれば、営業停止という制裁手段を利用せずとも、より直接的に、また恩恵を受ける住民全員対して税金を負担させる(94条)といった手段をとることもできる。

 ③よって、本条例は目的達成のための手段として他に緩やかな手段を選びうる点で、公共の福祉の範囲を逸脱する制約である。


(3)以上より、本条例はC社の結社の自由を侵害し、違憲である。



設問2


1.想定される被告の反論

(1)①商店会は、店舗を営む者によって構成される団体である。そのため、商店会への加入しない自由は、経済的自由である職業の自由(22条1項)から導かれるべきである。

 ②そして、職業の自由への規制は社会・経済政策の問題と関連するため、地域の社会・経済政策の担い手たる地方公共団体の裁量(同項「公共の福祉に反しない限り」)を尊重する必要がある。

 特に、本条例は、実質的には会費という形式での租税の確実な賦課徴収を目的とする。このような社会政策実現を目的とする積極的規制は地方公共団体の裁量を尊重し、裁判所は緩やかに合憲性を審査すべきである。

 具体的には、必要性と合理性について地方公共団体がその裁量を逸脱し、当該規制措置が著しく不合理であることが明白である場合に限って違憲となる。


(2)①本条例は目的達成のため、商店会への実質的強制加入といった強力な手段をとるが、これは、地域の商店街の活性化に非協力的な大型店に対して効果的であり必要性と合理性が認められる。

 ②C社は、最寄りの商店会のイベントや防犯措置等で多大な恩恵を得ていたが、それは商店会に加入する者の負担によっている。

 本来であれば、C社は、その恩恵に見合った負担をするべきであるのであり、他の小規模な店舗と相応の負担の差を設けることが合理的である。


2.私見

(1)①商店会は、店舗を営む者によって構成される団体ではあるが、本条例では、地域の防犯体制整備の目的もになっている。そのため、本件の商店会へ加入しない自由は、一概に職業の自由から導かれるものでない。商店会が、地域財政政策に対する意思形成主体として、精神的自由の側面をもつことを考慮して、地方公共団体の規制についての裁量を判断するべきである。

 ②被告の反論の通り、結社の自由が、主として経済的自由に対する規制と捉えたとしても、それに対する規制目的は、積極目的と消極目的に明確に区分することは困難なことが多い。そのため、具体的な規制の目的、対象、方法等の性質と内容に照らして地方公共団体の裁量の広狭を判断するべきである。

 ③そして、本条例の目的が、地域商業活動の活性化だけでなく、防犯体制整備という消極的目的を含むこと、目的達成のために事業停止という強力な手段がとられていること、その対象は実質的に地域の大型店に限定されていること、事業停止の影響は広く消費者にも及ぶことを鑑みると、地方公共団体の裁量は限定的に解するべきである。

 具体的には、原告主張の通り、目的が正当か、手段が他に選びうる緩やかな手段が無いか、を検討するべきである。


(2)①争点は、目的達成のため他に選びうる緩やかな手段が無いかどうかである。

 ②確かに、大型店は商店会のイベントによる恩恵を受けており、商店会に対して非協力的な態度を貫くでなく、それに見合った負担をすることが強く望まれる。そして、商店会への実質的強制加入という手段は、商店会の活動に非協力的な大型店に対しては確かに効果的な手段である。

 ③しかしながら、事業停止という手段が実効されると、大型店は、抱える在庫の処分や従業員に対する休業手当等、多大な不利益を被る。

 また、大型店を利用している消費者に対する大型店にへの信用も大きく毀損することになる。その結果、大型店に継続的な収益悪化が予測される。

 その上、地域単位で見ると、大型店から消費者が離れることで、地域の商業活動自体に支障をきたすという事態も想定される。

 ④目標達成のための手段としては、より緩やかで直接的な課税手段が考えられる。

 ⑤よって、本条例は目的達成のための手段として他に緩やかな手段を選びうる点で、地方公共団対の裁量を逸脱する規制である。


(3)以上より、本条例はC社の結社の自由を侵害し、違憲である。


以上