先日刑事事件のマーケティングのセミナーを受けてきました。
刑事事件は、債務整理や交通事故、離婚や相続に比べてまだ専門のサイトが少なく、事務所の得意分野にしていくには注目する分野であるということでした。
東京を除けば、確かに刑事事件の専門サイトは少なく、専門サイトを作って仕事を重ね得意分野にしていける可能性が大だということです。
ただ、刑事事件といえば国選弁護人、当番弁護士、被疑者法律扶助の制度があります。この制度を利用すれば、ほとんどのケースで弁護士の弁護を無料で受けることができます。
中には、判決で訴訟費用の負担を命じられ、国選弁護人の費用を負担しなければならないケースもありますが、それでも私選弁護の費用と比べれば格安です。
それでも、わざわざ高いお金を払って私選弁護人を選任する人はいるのか。成功報酬をいれれば、国選弁護人の8から10倍以上のお金がかかりますのに。
私も、当番弁護士や法律相談で私選弁護人の依頼をしたそうな人をみると、本当に受けていいのか思うこともあります。
国選でも私選でも、このケースでは誰が弁護人をやっても罰金。誰が弁護人をやっても執行猶予になるというようなケースもあります。それでも私選弁護人を依頼するメリットがあるのか。それでも私選弁護人を引き受けていいのか。依頼するほうも引き受けるほうも躊躇することもあります。
ところで、セミナーで、実際刑事事件を月15件ほど受任している事務所の先生のお話を聞くことができました。その先生はこの疑問に次のようにこたえていました。
国選弁護人と私選弁護人は、飛行機のエコノミークラスとファーストクラスの違いと思えばいい。飛行機に乗る際には、ファーストクラスの料金はエコノミークラスの料金の3倍はする。ただ、3倍のお金を払ったところで、到着時間は同じだし、墜落するときの危険性は変わらないので安全性も同じ。それでも3倍の料金を払うということがどういうことなのか考えればいい。国選と私選の違いも同じだというようなお話をされました。
国選弁護人の行っている弁護活動が劣っているということはできないと思います。ただ、国選弁護人の弁護活動のレベルは、(中には本当に手を抜く人もいないわけではないと思いますが)、標準レベルと考えたほうがよいと思います。
ある刑事事件のベテラン被告人(前科前歴が多い人で服役経験が多数ある人)に聞いたところ、自白事件の場合、国選弁護人の接見回数は1回から2回がほとんど。立証活動も大体情状証人と被告人質問。それに反省しているとか更生可能性があるとかお決まりの弁論。中には示談をするような案件があり、大変なものもありますが、そうでなければお決まりのプロセスを事務的にこなしていくだけ。それ以上のことをやってっくれる人は、熱心すぎる弁護士か暇な弁護士しかいない、ときいたことがあります。
これが国選弁護の実態をついているかどうかはコメントを避けますが、多数の事件を並行してこなしている弁護士がほとんででしょうから、国選弁護人の報酬でできるところまでやろうとすれば、標準レベルまでの質を提供するのが精一杯だと思います。
やはりお金を払って私選弁護人を依頼するというのは特別なことだと思います。つい最近覚せい剤取締法違反の弁護をうけたことがありますが、その被告人が同房者の話をしていました。その同房者は私選の弁護人をつけている。接見は毎日来る。伝言や差し入れは言ったとおりにしてくれる。そして、再犯で実刑になるケースなので刑務所のパンフレットのようjなものを持ってきて説明する。その代り弁護士費用は目玉が飛び出るほど高い。自白事件なのに○百万円。
ちなみに、私も私選でしたが、私がもらった費用はその○分の1。
確かに国選でここまでできるかといわれると、ほとんどの人は無理ではないかと思います。やはり私選弁護人はファーストクラスのサービスなのでしょうか。
私選の刑事弁護人の事件を積極的にマーケティングして引き受けていくには、国選弁護人のサービス以上のものを提供しなければならない。この構想を実行する前には、どういうことをやっていかなければならないのか。やはりそれなりの事前準備が必要でしょう。LCCの航空会社に明日からファーストクラスのサービスをしなさいと言っても無理なのでしょうから。
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2011-03-11 17:02:58 テーマ:ローカル
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