合わない仕事に見切りをつけるべきか。
前中日ドラゴンズ監督落合博満氏の著書「采配」を読んでおります。
その中で面白いことが書いてありました。
「セルフプロデュース能力」という能力です。よくわからない言葉ですが,本を見ると「自分自身を適性な世界へ導く才能」ということだそうです。
例えば,プロ野球選手としてプロ球団に入った人がいたとしても,実はその人は経営者に向いていたかもしれない。違う職業や違う道に向いているかもしれない。さすがに,落合監督のように20年も現役選手をしていれば,プロ野球選手の道が自分に向いていない,もっとほかの道があったのではないかと思うことはないが,例えば,自分はいいと思っていても監督や周りが評価してくれない,使ってくれないといったような場合,所属チーム,あるいはさらには野球選手の道にどの段階で見切りをつけるべきかということのようである。
落合氏は,昔であれば,終身雇用,「男子一生の仕事」という観念が強かったが,今の時代人材が動く時代であり,優秀な人はヘッドハンティングされるが,戦力にならない人は容赦なくリストラされる。そういう社会になってきているので,一般社会であっても,プロ野球選手のような「セルフプロデュース」という考え方が必要ではないかという問題を提起をされています。
弁護士をやっていると,自分はこの仕事には向いていないのではないかと思った経験を持っている人は1人や2人ではないと思います。また逆に,他の道から弁護士に転身して来た人の中には,自分はこの会社にいてもどこまで昇進するかたかが知れている。それならこの道に見切りをつけて,司法試験を受けて新しい道を探っていこう。こう思って弁護士になった人もいらっしゃると思います。
ただ,転身したほうがいいのか。それとも他の道へ進んだほうがいいのか。また,転身した人であっても,本当に転身して良かったのかと思っている人もいると思います。
私も裁判所書記官から司法試験を受けて弁護士になりました。広い意味では同じ業界ですが,転身と言われれば転身です。
司法試験を受けている時は,なかなか合格できず,本当に自分が進もうとしている道は自分にあっているのか。それとも,このまま裁判所にいて定年まで働いたほうがいいのではないか。こんなことで迷ったことは数知れません。
また,弁護士になって,なかなかうまく仕事ができなかったり,依頼者と意見があわなかったりけんか寸前までなったりすると,本当に弁護士になってよかったのかと思うことがありました。
でも,さすがに弁護士になって8年以上が過ぎ,自分の事務所を持ち,勤務弁護士,事務局スタッフを複数抱えた今となっては,本当に司法試験を受けてよかったのか。安定した公務員の身分の方が良かったのではないか,弁護士になって独立なんかして本当によかったのか,などと思うことはかなり少なくなりました。
今となっては,自分がわがままで,例えば何時から何時までとか,朝は何時に来いとか,自分が気がのらない仕事でも上司に言われたら嫌でもやらなければいけないという世界が自分には向かないことがわかってきました。わがままが通る今の立場は結構あっていると感じています。また,自分は細かい事務作業など大嫌いなので,これを部下に任せることができる「マネージャ型弁護士」という今の立場が向いていると思っています。もし裁判所書記官や勤務弁護士のように,人に雇われる身分であったら,絶対こんなことは許されません。
そういう意味では,今のところ転身は成功と見ていいと自分で勝手に思っています。
落合氏は,とにかく目の前の仕事にベストを尽くし,「自分には何ができるのか正しく認識し,できないことはできるように努力し,できるようになったら質を高めていく。こうやって段階を踏みながら仕事に取り組めば,次第にその仕事は自分にあっているのか,あるいは別の分野で頑張っていくべきなのか,客観的な視点でも判断できるようになる」と述べています。
悩んだらとにかく目の前のことに集中してベストを尽くし,その上で考えればいいということですが,私も賛成です。
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