本日夜9時に松田警察署の接見を終えて事務所に帰ってみると「〇〇の用件で〇〇さんから折り返し電話ください」とのメモが置いてありました。用件が書いてあったので大体想定されるお話と答えを考えて電話をかけました。


 以前に比べればこういうメモが置かれていることは少なくなりました。

 

 以前8年位前,まだ事務所を作ったばかりの時は,事務所から帰ってみると,このようなメモが山積みになっているのが普通でした。

 

 一日中,裁判所での期日,法律相談,警察署での接見などを終えて,夜遅くようやくくたくたになって事務所に戻ってみたら,事務所は明かりもついておらず暗く,誰もおらず「要折電」のメモだけが山積みになっている。

 

 この時はさすがに気力が失われ,なんともいえない悲壮感が漂います。同時に,他にやらなければいけない仕事がたくさん残っているのに,その前にこれ全部電話しなければいけないの,一体何時になったら仕事が終わるんだろう,と思うとやりきれない気持ちとかなり強いストレスを感じます。


 以前勤務弁護士として働いていたときは,ボス弁からは,「電話に追われるのは弁護士の宿命」というふうに言われ,これは受け入れなければいけない「試練」だといわれました。


 ただ,弁護士になってずっと思っていたことは,本当に「宿命」「試練」なのかということでした。

 それもそのはず。例えば事務所に帰ってから要折電が10件あったとしても,ほとんどの電話が1件2,3分で終わるような簡単な用件の電話でした。「明日の期日は何時からでしたっけ」「今日の判決の結果をおしえてください」「住民票は記載が省略されないやつが必要ですか」「こちらは,〇〇市役所ですが,戸籍の申請があったが聞きたいことがある」「頼んだ件はどこまで進んでいますか」。このような電話は2分もあれば十分答えられます。「〇〇について先生と相談したい」「今後の方針を相談したい」など難しい内容で,5分,10分かかる電話はわずか。10件折り返しの電話が必要だったとしても2件程度で,8件は簡単な用件なのです。果たしてそれをわざわざ後回しにして担当の弁護士が答える必要があるのか?もし,10件を2件に減らせれば,事務所に戻ってきた後の「悲壮感」と「ストレス」は大幅に減らすことができます。たとえ1件1件が簡単な用件だったとしても,数があればそれだけ受けるストレスと悲壮感は強いですし,メモに用件も書いていなければ,何を聞かれて何をこたえていいのか電話をかける前に考えてしまい,余計ストレスがたまります。事態をよく分析して改善策を考えれば,電話のストレスを改善できるのではないか。


 そこでこの対策として考えたのが,「電話に出た人に即座に処理してもらい,わざわざ後回しにして担当弁護士に回さないこと」。「事務局の能力向上」と「電話の処理は事務局の責任であって,弁護士に回すのは自分では処理できないときだけ」という意識を持たせることでした。そして,そのためには「いかなる情報も事務所全体で共有すること」です。担当弁護士の頭の中だけで管理されている情報を極力少なくすることです。

 例えば,「本日の判決の結果をおしえてください」という問合せがあったとしてら,あらかじめ,「判決言渡し期日に担当スタッフが判決の主文の内容を裁判所に確認してLAN上に報告しておくこと」というルールをつくっておけば,誰が出てもすぐ答えられます。判決が予想外の不利な結果で打ち合わせが必要な場合だけ後で弁護士が帰ってから電話すればいいだけです。市役所の戸籍係りからの問い合わせも,「戸籍の取り寄せは申請から戸籍到着まですべて事務局の仕事」としておけば,もしどうしても弁護士にきかなければわからないことがあるときだけ,弁護士がいるときに事務局の方から弁護士に聞きにきて,事務局が理解して役所に連絡すればいいことです。小為替が不足しているから追加してください,というような用件をわざわざ弁護士がきいいて処理しなければならないというおろかな事態は避けられます。また,「住民票の記載事項が省略したものでいいのでしょうか」という質問は,そもそも事務局がこの程度の質問に答えられないほうが問題と見るべきであり,それを担当弁護士に丸投げするなどと言うことは問題外と見るべきだと思いますし,上司たる弁護士の教育不足といわれても仕方がないと思います。入ったばかりでわからなかったら先輩事務員に聞くべきでしょう。


 事務局がかかってきた電話をなんでもかんでも弁護士にまわす「電話交換手」の役目しか果たさないのでは,弁護士のストレスはたまる一方だと思います。

 「宿命」「試練」だとあきらめて,何でもかんでも自分でやってストレスをためすぎて体を壊したりすることがないように考えなければならないと思います。体を壊すだけならまだしも,最近ではストレスをためすぎたためにおこる不祥事も散見されることを考えると,もう一歩踏みとどまって考えてみることが必要だと思います。

 

 子供の頃からおしえられてきた「自分のことは自分でやりなさい」という言葉ですが,確かに今まで親に何から何までやってもらっていた子供が独り立ちするのに有効な言葉かもしれません。ただ,完成した大人同士の世界でこれをいつも貫く合理性があるのか。人にやってもらってそのお礼を給料として出す。そして,お礼(給料)を渡しているからには,それ相応のストレスも分け合ってもらう。昔ながらの法律事務所は,「弁護士が何でも1人で仕事をこなし,単純作業だけ事務職員が分担する」という形態でした。現在では時代遅れの感があります。高校生でもできるような単純作業しかやらない人に年間300万円以上も渡す必要があるのでしょうか。これは私が弁護士業界をはじめて知ったときの第一印象でした。事務所の業務からでるストレスを100パーセント弁護士が背負うようなやり方は見直すべきではないかと思います。

 


 


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